【10月の歳時記から思うこと】

 10月の祝日や行事と言えば、スポーツの日、十三夜、えびす講、紅葉狩りなどがあります。しかし、これらがどのような行事なのかを知っている人は、少なくなってきているでしょう。日常生活の中で体験するとしたらスポーツの日でしょうか。

 この日はまず、休日であることと、運動会を開催する学校も多いかもしれませんので、認識されやすいですね。

 このような季節ならではの行事は本来、それぞれの地域の中で守られ、年長者から若者へ受け継がれていったものでした。最近は、地域コミュニティの過疎化や核家族化により、高齢者からの伝承がなくなって来ています。

 このように日本の伝統行事が薄れていく中、毎年勢いを増しているのがハロウィンです。ハロウィンは元々、古代ケルト人が行っていた秋の収穫祭や悪魔祓いの儀式であり、クリスマスと同様、れっきとした宗教儀式のひとつです。

 しかし現代の日本では、クリスマスにイエスキリストの誕生を祝う若者はほとんどおらず、ハロウィンに死者の霊を慰める若者は渋谷では見当たりません。

 日本人は遣隋使や遣唐使の時代から、輸入してきたものに独自のアレンジを加えて、オリジナリティある自国の文化を生み出すのが得意な民族でした。そして、そのDNAは現代でもあらゆる方面に生き続けています。

 渋谷のハロウィンに参加するために、海外からわざわざやってくる人たちもいて、今や日本のハロウィンは世界の中でも立派な日本の文化になっています。

 きっかけや理解はどうあれ、人と人とのコミュニケーションが活発になり、経済の活性化に一役買っているのでしたら悪いことばかりでもありません。しかし、本来の意味を知っていてアレンジを楽しむことと、最初から「仮装パーティー」だと思っているのとは大きな違いがあります。何より、他人に迷惑をかけるのは問題外です。これからの若者は海外に出ていくなど、どんどんグローバルに活躍していくことと思います。その時、ハロウィンを仮装パーティーだと思っていたり、クリスマスは素敵な夜景を見ながら恋人とディナーを楽しむ日などと思っていたりしたら大恥をかきます。本来の意味も知りつつ、大いに国際交流を楽しんでいただきたいと思います。

 私事ですが、以前ウエディングプランナーをしていた時、国際結婚のカップルは主に私が担当していました。その中で、ヨーロッパやアジアの一部の国の出身者は自国の文化について一定の知識があり、とても誇りを持っていると感じることが多々ありました。結婚式には自国の風習を取り入れたいと望む方が多く、その中でも民族衣装は最たるものでした。同時に、日本の文化にも非常に興味を持って聞いてきてくれました。自国の文化を大切にし、相手の国の文化にも敬意を表するという姿勢は、国を超えてお互いの信頼感が高まります。

 世界で活躍していこうと思っている人には、とても大切な姿勢とスキルであると感じています。

(植木 乃梨子)

   

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