【日本の冠婚葬祭~通過儀礼①~】

前回のブログでは、『冠婚葬祭』という四つの文字が表すそれぞれの意味について、ご紹介しました。まだ、お読みになっていらっしゃらない方は下記をご参照ください。

【日本の冠婚葬祭】 | 添削堂.com (tensakudo.com)


その中で、『冠』は本来元服の儀式を表しており、そこから成人式を示すようになったこと。さらに、そこから広義に捉えられるようになり、現代では『通過儀礼』全般を示すようになったことを書きました。

通過儀礼とは、人間の一生の中で一度だけ迎える節目のお祝いのことを指します。その中で最も初めに迎えるお祝いは『誕生』です。

その後、毎年誕生日を迎えますがこれも通過儀礼です。「生きている間に誕生日は何回も来るのに…」とお思いかもしれませんが、1歳の誕生日、2歳の誕生日というようにそれぞれの年齢に達したことを祝う誕生日は一生に一度しか来ません。それぞれが一度きりの、特別な日なのです。その中でもさらに、特定の年齢に達した年に行うお祝いがありますが、それはまた別の機会に順次ご紹介していきます。

『誕生』の話に戻ります。人が生を受けて、この世に生まれてくるという事は本人にとっても家族にとっても非常に大きな出来事です。はるか昔、出産は母親にとって命がけの行為であり、無事に生まれることが当たり前ではない時代がありました。

出産の記録は平安時代以降しか残されていませんが、その頃は医学も発達しておらず、衛生面でも全く十分な状態ではありませんでした。さらに、当時、「血はケガレ」とされていたことから、出血を伴う出産はケガレの行為とされ、家の中で行われることはありませんでした。妊婦は陣痛が始まると、母親や近所の出産経験のある女性たちの手を借り、山や森、川辺、海辺に移動しそこで出産をしたそうです。このような不衛生な環境での出産は、母も子も命を落とすは珍しくなく、まさに命がけでした。それだけに、誕生や成長を祝う儀式の意味は今よりもとても大きな意味がありました。

江戸時代になると、森や川などのような屋外ではなく、家の外に産屋や納屋のようなものが設けられ、そこで出産するようになっていきました。さらに、その頃には『取り上げ婆(とりあげばば)』と呼ばれるような人が出産に立ち会うのが一般的になって来ます。いわゆる『産婆』と呼ばれる人たちですが、「お産の熟練者」の存在は妊婦たちにとって大きな心の支えになったのではないかと思われます。

近代に近づくにつれ、出産による母子の死亡率は減少していきますが、無事に生まれることを一心に祈る気持ちは今も昔も変わらないでしょう。

次回からは、生まれた子が健やかに成長するように祈る儀式についてご紹介していきたいと思います。

植木 乃梨子(うえき のりこ) | 添削堂.com (tensakudo.com)

   

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