今年も早いもので、あとひと月足らずで新年を迎える月となりました。
12月の和風月名は1年の中で「最もよく知られている」と言っても過言ではない『師走(しわす)』です。
由来は、「普段は落ち着いている師(僧侶)も仏事で忙しく走り回る月」からきており、年納めに際して、読経のため僧侶が檀家回りで忙しくしているさまを言い表しています。
実際に12月は僧侶だけでなく、商売をやっている方なども忙しく、大晦日も早く食べられる蕎麦で食事を済ませなければいけないほどの忙しさでした。一般の家庭でも、一年の厄落としや新年の準備などで何かとやることが多くなる月でもあります。
12月と言えば、「事納め」「針供養」「すす払い」「正月事始め」「歳の市」「冬至」「大晦日」などの行事があります。昔はもっと多くの行事があったのでしょうが、現代まで伝えられているものだけでもこれだけあります。
その中で、1番初めに行われる行事は「事納め」で、実は2月8日と対になって「事八日(ことようか)」とも呼ばれます。そしてこれは、「歳神様」と「人」によってそれぞれ正反対の意味を持つ行事となっています。
お正月の準備を始めるのは12月8日で、この日から年越しの「神事」が始まります。
そして年が明け、2月8日になると歳神様のために供えられた神棚も全て片付けて納められます。つまり、歳神様にとっての「事始め」は12月8日で、「事納め」は2月8日と言うことになります。一方、人は12月8日に1年の農作業を納め、正月準備に入ります。そして、お正月が明け2月8日になると新たな年の農作業を始めます。つまり、人にとっての「事始め」は2月8日で、「事納め」は12月8日になるということです。
同じ「事納め」でも、立場によって正反対の行事になることはとても興味深いです。
その他の行事についても、実際に経験したことがないから、よく知らないと思うものもあるかもしれませんが、それぞれの行事には現代にも当てはまる大事な意味が込められていることが多いです。機会があれば、語源や由来を調べてみると色々わかって面白いです。
さて、昨年秋から連載しておりますこの『歳時記』ですが、なんとか1年をめぐりました。お読みくださっていた方には、心より感謝いたします。今回の12月を持ちまして毎月の行事についてのご紹介は一旦終了にいたします。
今月の後半は来年に向けてのつなぎとなる行事のご紹介をさせていただき、来年からは『日本の儀式』についてご紹介させていただきたいと思います。
(植木 乃梨子)