私が世界に紹介したい「美しい日本語」は「雨垂れ石を穿つ(あめだれいしをうがつ)」です。
「雨垂れ」とは雨のしずく、「穿つ」とは穴をあけることを指します。
「雨垂れ石を穿つ」という言葉は、「小さなことでも長く続けていけば成果を得られること」を意味しています。
「雨垂れ石を穿つ」の由来は中国の漢書『枚乗伝』の一説にある「泰山之霤穿石」です。
この言葉は、小国の王が起こそうとした反乱を阻止するために家臣が言ったとされています。由来となっている元の言葉では、「小さな災いの積み重ねがやがて大きな災いを生む」という戒めの意味で使われていたようです。
「泰山之霤穿石」を現代語訳すると、「泰山の雨の滴りは石を穿つ」。
つまり、「泰山(※中国山東省中部にある名山)から雨のしずくが滴り落ち、長い時間をかけて石に穴を開けた」ことを表しています。このことから、「小さなことでも積み重ねることでやがて大きなことを達成できる」という前向きな意味で用いられています。
皆さんは「小さなことを粘り強く続けたことで大きな成果を得た」経験がありますか?
私は中学から続けていた陸上競技800mで、高校時代に自己最高記録を残したいとの思いから、1時間かかる通学前の早朝5時に起きてランニングを続けました。最初は朝日が昇る前に起きるだけでも辛かったのですが、毎日続けていくうちに自然と早朝に目が覚め、通学前の限られた時間で走る距離がどんどん伸びていきました。
そして、最後の高総体で自己記録を更新し、100人以上が出場する予選を突破。初めて準決勝まで進出できました。たゆまぬ努力が実を結び、家族や友人、後輩が自分のことのように喜んでくれたことを思い出します。
さて、突然ですがここで問題です。
問題
日本語で「雨垂れ」と読む1文字があります。それはなんでしょう?
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・
・
正解は、「!」です。
ビックリ、ですよね。皆さんは何と呼んでいますか?
ビックリマーク?感嘆符?エクスクラメーションマーク?
「!」
形をよく見ると、雨の雫が落ちる様子に見えてきませんか。
詩的で繊細な感覚を持つ日本人のこころが垣間見えるようです。
「雨垂れ石を穿つ」
あなたのほんの小さな努力の積み重ねが、やがて大きく実を結ぶ時が来ることでしょう。
(工藤 さゆり)