よしなに

 私が世界に紹介したい「美しい日本語」は「よしなに」です。
 私がこの言葉を始めて聞いたのは20年近く前のことでした。

 当時私は製造工場にいて、現場で作業するオペレーターと生産管理担当との間に入って調整する出荷進行の仕事を担当していました。その時に見た生産管理担当者をAさんとします。Aさんは良く言えば「優しい」人でしたが、その部分が「仇」になっていて、営業からの注文を断れずにオペレーターからの反感を買ってしまうところがありました。

 ある日も例の如く営業からの無理な注文を受けてしまってオペレーターからの反感を買っていました。その際にAさんは「そこはよしなに…」とオペレーターに頼んでいて、それで「よしなに」という言葉を覚えました。

 あれからかなりの歳月が経過してふと思い出したのでちょっと調べてみました。

 『よいように。適切に。語源については、形容詞「良し」に接尾語「な」と断定の助動詞「なり」の連用形に「に」が付き一語化したものとする説(角川古語大辞典)があるが、「な」の素性が必ずしもはっきりしない。
この「な」に関して、『大言海』は「ナは、あんな・こんなのナにて、様(やう)の意」ととくが、疑問である。

引用元:『新明解語源辞典』三省堂

 とありました。どちらかと言うと「あとの判断は任せるので物事を上手く進めて欲しい」といった時に使う言葉のようです。また、挨拶に使われることも多いようです。ただ、具体的な指示を出すといったシーンで使うと逆効果ですので、適切なタイミングで使うようにしていきたいです。

(茅根 康義)

   

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