ビジネス文書、webライティング、ブログ。ここ数年、「書く」ことを「稼ぐ」ことにつなげるノウハウを説く本を数多く見かけるようになった。webライターは人気の副業のひとつとなり、個人ブログアプリ「note」も盛況である。そんなブームを受け、文章術の本を買ってみたり、ブログのアカウントを作ってみたりした人もいただろう。
しかし、「書く」ことを始めようと思い立った人は、準備を整えたところで、ある壁にぶつかる。書きたいのに、書けない。いざ書こうとすると、何をどう書いたらいいのかわからない。机の前で悩むうちに時間が過ぎていく。そして他のタスクを理由にこう言う。「時間があるときに書こう」。だが、その機会は永遠に訪れない。
いしかわゆき『書く習慣』は、そんな「書くことを趣味や仕事に活かしたい、けれどなかなか続かない」と悩む人に勧めたい一冊である。
この本は、現役の若手ライターである著者が、自身の経験を基に「書く」ことにまつわるノウハウを伝える一冊である。この本の特徴は、読者に目線が近いことだ。「書く」ことを、「手に入れれば丸儲けできるとっておきの技術」ではなく、「生活の中に組み込むと人生が楽しくなる習慣」と捉える。そのうえで、「書く習慣」を身につけるための、マインドセットと具体的なノウハウを説く。そんな、学びがありつつも読みやすい一冊である。
章立ては下記の通り。
はじめに 人生なんて、「書く」だけで変わる
第1章 言葉と仲良くなれば書けるようになる
第2章 習慣になれば書くのが楽しくなる
第3章 ネタを見つけられると止まらなくなる
第4章 ちゃんと伝わると嬉しくなる
第5章 読まれるともっと好きになる
第6章 「書く」ことが与えてくれるもの
おわりに 「書く」ことで変わるもの、変えちゃいけないもの
第1章・第2章では、「書く」ことのハードルを下げに下げるためのマインドセットと具体的なノウハウが紹介される。第1章がマインドセット、第2章が具体的なノウハウ、という役割分担である。
第3章から第5章では、ネタ探しから推敲までの「書く」テクニックが紹介されている。第3章はネタ探しの方法、第4章は読者を意識した目線の設定、第5章はより多くの読者を得る方法、という役割分担である。
第6章では再度、「書く」ことを習慣化することの意義が説かれる。「あなたの文章が『良き相談相手』になってくれる」「平凡な毎日が言葉で『ラベリング』される」など、読者の「書く」ことを後押ししてくれそうな見出しが並ぶ。
そして本の末尾には、親切なことに、「『書く習慣』1ヶ月チャレンジ」と題し、1ヶ月毎日文章を書くためのテーマリスト(30個)がある。ここまで優しくかつ具体的に励まされたら、もう「書く」しかない、という気になる。
仕事であれ趣味であれ、ある物事を続けようと思うのなら、その物事を習慣にする必要がある。習慣にしようとする物事を、たまにある特別なイベントではなく、毎日のようにする行動として生活に組み込むべきなのである。 いしかわゆき『書く習慣』は、「書く」ことで人生を豊かにしたい人の背中を押してくれる一冊だ。かく言う私も今、「『書く習慣』1ヶ月チャレンジ」の最中である。
(藤崎 尊文)