「要約」とは、文章の要点を見極めて短くまとめることです。要約は、中高生から大学生、社会人まであらゆる場面で求められる重要なスキルのひとつです。あるコツを押さえてトレーニングすることで誰でも簡単に要約文が書けるようになります。
今回の記事では、要約の書き方ポイント5つと要約スキルを高めるトレーニング方法についてご紹介します。文章力アップに不可欠な要約のコツをおさえて、受験の小論文対策、レポートや論文作成、ビジネス文書の作成にお役立てください。
1.要約力とは
要約力とは、文章や会話の中から「要点」を掴み、文章や言葉にして端的に伝える力です。「要点」とは、相手が最も伝えたい大事な部分のことです。要約力を身につける最大のメリットは、文章の大事な部分を見つけること(=読解力)ができ、要点を押さえた伝わりやすい文章表現(=文章力)ができることです。
私たちは、普段の会話で相手が伝えたいこと(=要点)をキャッチし、ボールを返すために自分の言葉で相手に伝える作業を繰り返しています。しかし、相手が何を伝えたいのかが分からないと、相手のボール(要点)を上手くキャッチできず、会話は成立しません。
そこで、要約力を身につけることで話の要点を素早く掴むことができ、相手との会話がスムーズになります。その結果、物事の本質を見極められる高いコミュニケーションスキルとして、ビジネスシーンでも大いに役立ちます。また、要約力は授業の課題や試験、受験対策にも必須事項です。要約力はトレーニングすることで誰でも身につけることができます。要約が苦手な方はまず実践してみましょう。
2.要約文の書き方~5つのポイント~
要約文の書き方で押さえるべきポイントは、以下の5つです。
では、それぞれを詳しく見ていきましょう。
2-1.ポイント①内容把握:文章を2回以上読む
要約するためには文章を読み、自分の頭で情報を整理して言葉で伝える必要があります。内容を理解するためにも最低2回は文章を読みましょう。
1回目のポイント:テーマや段落の構成を把握するためにざっと目を通すこと 2回目のポイント:繰り返し登場する単語や表現(=キーワード)に印をつけながら読むこと |
時間制限がない場合は2回以上読み、文章全体を把握するようにしましょう。時間制限がある場合は、文章を読む回数が増えるほど時間に余裕がなくなってしまいます。2回に集中して文章を読み、自分の頭に内容をざっくりと入れましょう。普段から読書をするなど文章を読むことに慣れると速読ができるようになります。
2-2.ポイント②要点把握:段落ごとに文章の要点(筆者が一番述べたいこと)を見つける
ポイント①では文章全体の内容を把握しました。次に、「文章の要点(筆者が一番述べたいこと)」を見つけていきます。文章中の表現を手掛かりに、段落ごとに筆者が一番述べたい「文章の要点」部分に印を付けましょう。要点の見つけ方のポイントは下記の4点です。
「要点」は具体例や体験談の段落には述べられていないことが多いです。なぜなら、具体例や体験談は筆者の主張(要点)を補足する役割として用いられることが多いためです。具体例や体験談は読み飛ばし、要点を見つけることに集中しましょう。
上記、4点のポイントを押さえることで「要点」を見つけやすくなります。文章を読む際には集中して、「つまり、この段落で筆者は何が言いたいのか」を自分の頭の中で問いながら文章に目を通すこともおすすめです。
2-3.ポイント③要点整理:段落ごとの要点を繋げて自分の言葉で文章化する
ポイント②では段落ごとに要点を把握しました。続いて、要点を繋げて意味が伝わる文章にします。ここでの注意点は、筆者の主張を変えるような言い換えをしないようにすることです。指定文字数に余裕がある場合は、要点に優先順位を付けて筆者の主張を補足する文章をつなげましょう。そのためには、接続詞を活用することで文章の流れがスムーズになります。一方、指定文字数が少ない場合は最も重要な要点を見極めて、文字数を絞る作業が必要です。そのためには、可能な限り接続詞を省き、文章を必要最小限に削ぎ落として要点のみを端的に述べましょう。
高い
▲「つまり、」「要するに、」「すなわち、」「言い換えると、」など:強調して主張や説明する文章が後に続く【換言】
▲「よって、」「したがって、」「すると、」「そこで、」など:前の文章は原因や理由を示し、後の文章は結果を示す【順接】
▲「しかし、」「ところが、」「だが、」など:前の内容とは反対の内容を示す【逆接】
■「ところで、」「では、」「さて、」など:前の文章とは話題を切り替える【転換】
▼「また、」「および、」「なお、」など:前後ともに同じ事柄で内容を補足する場合【添加】
▼「そして、」「それから、」「さらに、」など:前後ともに同じ事柄を示す文章を続ける【並列】
▼「または、」「もしくは、」「それとも、」など:前後の事柄の比較やどちらかを選択する【対比・選択】
低い
2-4.ポイント④字数調整:指定された文字数に文章を調整する
特に試験では、要約の文字数が決められています。そのため、文字数に合わせて要約の文章の長さを調節する必要があります。指定された文字数に足りないからといって、自分の感想や考えなどを加えないようにしましょう。あくまでも、文章に書かれている内容に沿ってまとめましょう。要約の文字数に関しては、【3.要約力を高めるトレーニング方法3選】の【②文字数にルールを設けて複数パターンに挑戦する】にて詳しく解説しています。
2-5.ポイント⑤最終確認:設問に沿っているかを確認する
最後に出来上がった文章が設問に沿った回答になっているかを必ず確認しましょう。特に試験の場合は、「後半を要約せよ」「傍線部の主張について要約せよ」など設問に指定がある場合があります。もし、試験中に設問に沿っていないことに気づいても慌てずにポイント②で段落ごとに見つけた要点を振り返り、落ち着いて要点をまとめましょう。
3.要約スキルを高めるトレーニング方法3選
次は、実際に要約力を高める方法について3つ説明していきます。
- トレーニング方法①基礎:あらゆる文章に触れて、とにかく量をこなす
- トレーニング方法②実践:文字数にルールを設けて複数パターンに挑戦する
- トレーニング方法③応用:自分以外の人に見てもらいアドバイスを受ける
3-1.トレーニング方法①基礎:とにかく量をこなす
要約力を高めるためには、あらゆる文章に触れてとにかくたくさん要約してみることです。数学の計算などと同じで、数をこなすことで段々とコツが掴めます。回数を重ねて土台となる基礎を築くことで、試験などで出題される初見の文章でも要点を押さえることができるようになります。自分が好きな本や気になる情報を見つけたり、通学時間や就寝前の隙間時間に読書をしたり、日常的にさまざまな文章に触れる機会を増やしていけるように行動していきましょう。
3-2.トレーニング方法②実践:文字数にルールを設けて複数パターンに挑戦する
要約は文字数を指定されて出題されることが多くあります。指定文字数に対応するためにも、下記の4つのパターンで複数の要約を実際に作ってみましょう。
(例1)約800字の文章を要約する場合
パターン1:20字 パターン2:50字 パターン3:100字 パターン4:200字 |
(例文)読書の重要性について
引用元:Microsoft BingAIチャットより出力
読書は、多くの人にとって楽しみや趣味の一つで様々なメリットがある。読書の重要性について、以下の3つの点を紹介する。
1つ目は、知識や学習の向上である。読書は、知識や学習の向上に役立つ。本は、あらゆる分野やテーマに関する情報や知見を提供してくれる。本を読むことで、自分が興味や関心のあることを深く理解したり、新しいことを学んだりすることができる。例えば、エロン・マスクは、ロケットを作る方法を本から学んだと言っている(※1)。また、本は、自分の考え方や視点を広げたり、批判的思考や創造力を養ったりする効果もある。
2つ目は、脳や心の健康の維持である。読書は、脳や心の健康の維持にも寄与する。本を読むことは、脳にとって良い運動である。MRIスキャンによると、読書は脳の複雑な回路や信号を活性化させる(※2)。読書は、記憶力や集中力を高めたり、認知症やアルツハイマー病の予防にも効果的である(※3)。また、本は、ストレスや不安を減らしたり、睡眠の質を向上させたりする効果もある(※3)。本は、気分を明るくしたり、自己肯定感や幸福感を高めたりする効果もある(※3)。
3つ目は、人間関係やコミュニケーションの改善である。読書は、人間関係やコミュニケーションの改善にも役立つ。本は、他者の感情や考えを理解する能力を高める(※3)。これは、「心の理論」と呼ばれるスキルであり、社会的な関係を築くために必要なものである。本を読むことで、共感力や対話力が向上し、人と仲良くなったり協力したりすることが容易になる。また、本は、語彙力や表現力を高める(※3)。本を読むことで、豊かな言葉を身につけたり、自分の考えや感情を伝えたりすることができる。
以上のように、読書には様々な利点がある。読書は、知識や学習の向上だけでなく、脳や心の健康の維持や人間関係やコミュニケーションの改善にも寄与する。読書は、人生において重要な役割を果たす活動であると言えるだろう。(812字)
参考サイト:(※1) 本を読むことの利点:あなたの心身の健康のために (healthline.com)
(※2) 本を読むことの10の利点:なぜあなたは毎日読むべきですか (oberlo.com)
(※3) 読書の10の利点:毎日読むべき理由-LifeHack
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(例2)上記の例文で要約文を4パターン作成した例
・パターン1:20字 読書は知識、健康、人間関係を改善する。(19字) ・パターン2:50字 知識や学習の向上、脳や心の健康の維持、人間関係やコミュニケーションの改善に寄与する読書は重要である。(50字) ・パターン3:100字 読書の重要性は、知識や学習の向上だけでなく、脳や心の健康の維持や人間関係やコミュニケーションの改善にも寄与することだ。様々な利点がある読書は人生において重要な役割を果たす活動である。(91字) ・パターン4:200字 読書の重要性は、知識や学習の向上だけでなく、脳や心の健康の維持や人間関係やコミュニケーションの改善にも寄与することだ。なぜなら、本はストレスや不安を減らして睡眠の質を向上し、自己肯定感や幸福感を高める効果があるからだ。また、読書は記憶力や集中力、語彙力や表現力、批判的思考や創造力を養える。さらに、他者の感情や考えを理解する能力を高め、社会的な関係を築く人生において重要な役割を果たす活動である。(198字) |
上記の4つのパターンから、指定文字数によって要約文の印象が大きく変わり、言葉の削ぎ落とし方が変わることが分かります。要約する文章の内容によって変わりますが、今回の要約文のイメージは下記の通りです。
・パターン1:20字➔「読書の重要性」についてキーワードを使って「見出し」を作るイメージ ・パターン2:50字➔最も大事な部分である要点を一文で端的にまとめるイメージ ・パターン3:100字➔一文で要点をまとめて、もう一文で軽く補足が入るイメージ ・パターン4:200字➔要点を押さえたうえで、筆者の主張を補足する情報が具体的に入るイメー |
パターン4のように指定された文字数が多いと、要点を上手く整理できずに苦戦することがあるかもしれません。その場合は、文章を事柄ごとに箇条書きで羅列すると情報が整理しやすくなります。また、作成した文章の内容の重複に気づきやすく、自分の言葉で文章化する際に非常に役立ちます。
たとえば、今回の場合は要点が「読書の重要性」の3点についてであり、指定文字数が200字ではその根拠となる補足説明をするために文章の整理が必要です。上記の(例文)から「読書は、~」「本は、~」「本を読むことで、~」の文頭から始まる文章が各段落ごとにあることが分かります。そこで、文頭から始まる文章同士を段落を分解して箇条書きにしてみると情報が視覚化できやすくなります。下記の(例3)文章を箇条書きでまとめる場合の例をご覧ください。
(例3)文章を箇条書きでまとめる場合の例
読書は、多くの人にとって楽しみや趣味の一つで様々なメリットがある。読書の重要性について、以下の3つの点を紹介する。 ・1つ目は、知識や学習の向上である。2つ目は、脳や心の健康の維持である。3つ目は、人間関係やコミュニケーションの改善である。 ・読書は、知識や学習の向上に役立つ。 ・読書は、脳や心の健康の維持にも寄与する。本を読むことは、脳にとって良い運動である。MRIスキャンによると、……。 ・読書は、記憶力や集中力を高めたり、認知症やアルツハイマー病の予防にも効果的である(※3)。 ・読書は、人間関係やコミュニケーションの改善にも役立つ。 ・本は、あらゆる分野やテーマに関する情報や知見を提供してくれる。 ・本は、自分の考え方や視点を広げたり、批判的思考や創造力を養ったりする効果もある。 ・本は、ストレスや不安を減らしたり、睡眠の質を向上させたりする効果もある(※3)。 ・本は、気分を明るくしたり、自己肯定感や幸福感を高めたりする効果もある(※3)。 ・本は、他者の感情や考えを理解する能力を高める(※3)。これは、「心の理論」と呼ばれるスキルであり、……。 ・本は、語彙力や表現力を高める(※3)。 ・本を読むことで、自分が興味や関心のあることを深く理解したり、新しいことを学んだりすることができる。例えば、…… ・本を読むことで、共感力や対話力が向上し、人と仲良くなったり協力したりすることが容易になる。 ・本を読むことで、豊かな言葉を身につけたり、自分の考えや感情を伝えたりすることができる。 以上のように、読書には様々な利点がある。読書は、知識や学習の向上だけでなく、脳や心の健康の維持や人間関係やコミュニケーションの改善にも寄与する。読書は、人生において重要な役割を果たす活動であると言えるだろう。 |
上記の(例3)は、同じ事柄同士で内容を整理したイメージ例です。ここから、指定文字数に合わせて言葉の取捨選択をする必要があります。このように、最も重要な要点に関する補足事項が必要な場合は、事柄ごとにまとめて情報を整理することがポイントです。
今回の例文は、MicrosoftBing AIチャットより文章を出力しました。現代は本や新聞だけでなく、Web上であらゆる分野の情報に触れられます。そこで、ChatGPTなどを使うと字数を指定して好きなテーマで文章を出力してもらえます。出力された例文を読んで、4パターンの文字数で要約文を書く練習をしてみましょう。要約スキルは、何回も文章を作成し、何度も書き直すトレーニングを重ねることで上達していきます。
3-3.トレーニング方法③応用:自分以外の人に文章を見てもらいアドバイスを受ける
上記のトレーニング①と②の基礎と実践を繰り返す中で、さらに要約力を高めるためには自分の文章を他者に見てもらうことが大切です。なぜなら、第三者の立場から客観的なアドバイスを受けることで、自分では分からない新たな気づきを得ることができます。特に、「本当に大事なところが抜き出せているか?」、「筆者の主張と合っているか?」、「正しい日本語で書けているか?」など、不安がある場合はおすすめです。自分一人では一面的な視点で物事を考えてしまいがちです。たとえ自分の文章に自信がある場合でも、客観的に他者からアドバイスを受けることで、多角的な視点を持つことができます。つまり、要約力ならびに文章力は、自分の努力と他者の協力を掛け合わせることでさらに高めることができるのです。
4.【番外編】根本的に文章が苦手な方へ~視写がおすすめ~
要約する以前に文章が苦手で、文章の作り方がわからないという方には、「視写」がおすすめです。まずは、見本をそのまま写してなんとなく文章の形を覚えることから始めるといいでしょう。「視写」は、文章を「視(み)」ながら「写」すことです。この方法は、遥か昔から文章上達のためには最善の方法とされ、多くの名作家が名作を視写していたといわれています。
「視ながら写す」ことなら簡単にできそうに感じませんか?「視写」は自分がいいと思う文章と原稿用紙を用意し、文章を一字一句間違えないように写すこと、それだけです。しかし、実際にやってみると最初のうちは意外と大変だと感じるかもしれません。なぜなら、他人の文章を書くということは、その人が頭で考えたことをあなたの頭で共有しているのと同じで、情報をインプットしているのと同じことだからです。
↓参考までに、情報のインプットや文章力アップのコツに関するこちらの記事もご覧ください。↓
文章が苦手で書けないという方は、知っている文章量が圧倒的に少ないことも理由の一つです。「視写」は、触れる文章量を増やすことができます。また、文章の書き方の基礎を補うためにも最適です。読むだけでなく手を動かして書くことで文章の流れを覚え、短期間で書き方の土台を身につけることができます。
このように、「視写」することで文章を書く際に必要な基礎能力が培われ、文章力の向上に役立ちます。何十冊も読書をするより、一節の「視写」で効果的に短期間で文章力をアップさせることができます。新聞やインターネット記事の中から情報を収集することで小論文の練習にも繋がります。そこで、あなたが読んで気になった文章を選びましょう。
また、慣れてきたら時間を計って視写してみることもおすすめです。自分が「何文字を何分で書けるのか」を知ることで、試験の際のペース配分に活かせます。作業時間を意識して行うことは社会人になっても重要です。トレーニングを継続することで時間配分に余裕を持てるようにしましょう。
5.まとめ
要約は、トレーニングを重ねることで誰でも必ず身につくスキルです。要約力を身につけると社会人になっても有利に役立ちます。たとえば、報告書などのビジネス文書では、事実と意見の要点をまとめて文書を作成することができます。また、プレゼンテーションの場では、議題の要点を相手に伝わりやすく説明できる資料を作成することができます。要約力は、ビジネスシーンにおいても大いに求められるスキルのひとつです。
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