皆さんは学生時代に初めて「小論文」と出会い、書くことが多いのではないでしょうか。「小論文を書きなさい」と言われても最初は戸惑ってしまうかもしれません。「書き出しが思いつかない」「要約が苦手」「書き方や構成がわからない」など、さまざまなお悩みがあると思います。そこで、なぜ戸惑うのか、悩んでしまうのか、その理由を「小論文」「作文」の違いを明確にしながら、書き方のポイントも押さえて解説していきます。
●そもそも「小論文」とは
「小論文」と聞いてあなたはどのようなイメージを浮かべますか?
「作文」ともまた違う気がする…
「小論文」には根拠が必要…
皆さんそれぞれにさまざまな「小論文」のイメージがあると思います。共通していえることは、「小論文」は試験科目の名前だということです。こんなにも私たちの頭を惑わせる「小論文」とは一体何者なのでしょうか。実際の小論文試験では、時に「作文」、または「要約文」、はたまた「説明文」を書くように出題されることがあります。さらに、「国語」や「現代文」などの教科を問わず、「英語」や「物理」、「数学」でも出題されることもあります。
つまり、「小論文」はあらゆる教科で趣旨を変えて出題される傾向にあります。そこで、重要な小論文対策は「志望先の過去問を手に入れて、出題傾向を調べること」です。
もし、あなたに課された「小論文」が「小さな論文」ではなく、「異なるパターン」だとしたら、出題趣旨に沿った対策をする必要があります。
●あらゆる「小論文」出題パターン
(例1)「作文」の場合
×書くべき内容は社会的な事象ではない
(例2)「要約文」や「説明文」の場合
×「自分の意見」は書かない
このように、「小論文」は出題先の趣旨によって出題傾向が千差万別です。過去問を調べて、志望先の出題傾向に沿った対策を取りましょう。
Point❶ 出題傾向と出題趣旨を見極める
- 過去問を入手し、出題傾向を調べよう
- 出題趣旨が文字通りの「小さな論文」?「異なるパターン」?どちらか見極めよう
●過去問の入手方法
基本的に各試験ごとに過去問は公開されています。志望先の過去問は必ず入手しましょう。しかし、一部の大学入試や社会人入試などで過去問が非公開の場合があります。
その場合は、まずネットで情報収集をしましょう。それでも入手できない場合は、ダメ元で志望先に電話をして聞いてみるのも一つの手です。もし、過去問を入手できなくても、試験に関する「周辺情報」だけでも充分対応策が考えられます。まずは、志望先が求める「小論文」の出題趣旨を調べるところから始めましょう。
Point❷ 「過去問」の情報Checkポイント
- 「制限時間」「制限字数」「問題形式」
- 「出題内容の傾向(志望先の学習内容に直結するかどうかなど)」
●「小論文」と「作文」の違いとは
さて、いざ原稿用紙に文章を書き始めると、ふと疑問に思ったことはありませんか?
「小論文」を書く際に誰もが一度は疑問に思うことではないでしょうか。
その答えは、「論文」は社会のことを論じる文章、「作文」は自分のことを直接書く文章です。しかし、ややこしいことに「論文」と「作文」に明確な境界線はありません。色の濃淡で表現すると「作文」が淡い色で「論文」が濃い色といえるでしょう。つまり、「作文」と「論文」はあくまでも文章で自分を表現する手法のひとつで、同じ種類の色でも濃淡に違いがある関係といえます。
ここで重要なことは、「作文」は自分の経験を中心的に振り返り、感想を述べることであり、「論文」は、事実や意見に基づいて自分の意見の根拠を挙げて主張することです。
これらの要素を踏まえた上で、出題者の特徴や設問の要求に沿って対応する必要があります。自分に求められている文章は、論文寄りなのか、作文寄りなのか、それとも中立のバランスを取るべきかなどの押さえるべきポイントは設問に示されています。まずは、文章を書く前に設問の要求を読み取ることが重要です。
(例3)「論文」と「作文」のあいまいな境界線
⇩
〔論文の場合〕事実に基づいて自分の意見の根拠を挙げて主張する
(例)「私は、ゴミの多さから環境問題の実態について着目した。たとえば・・・」
〔作文の場合〕自分の経験を中心に感想を具体的に述べる
(例)「私は、ゴミの多さから環境問題の実態を知り、自らの未熟さを思い知らされた。なぜなら・・・」
このように、書き手によって「論文」と「作文」の境界線は変化します。ここでのポイントは、志望先の「小論文」での出題趣旨をつかむことです。出題の意図を汲んだ上で、「作文」で自分が社会に関して思ったことを書くのか、それとも「論文」で個人的な経験を社会的な事象の例として挙げて書くのか、論文要素と作文要素の色の濃淡のさじ加減が重要です。
下記の評価指標を参考に、志望先に求められている自分の文章が「作文寄り」なのか、「論文寄り」なのかをしっかり見極めて書きましょう。
Point❸ 「作文」「論文」それぞれの評価ポイント
- 「作文」で評価されやすいポイント:あなたの熱意や人柄、素質など
(出題例)「思いやり」「昇格後の決意を述べよ」「自らの理想とする〇〇像」など
➢「作文」的テーマを課す出題者は、あなたの人となりを知りたがっている - 「論文」で評価されやすいポイント:あなたの論理的思考力、文章力、知識など
(出題例)「少子高齢化について論ぜよ」「今後の当社の可能性」「資料文を読んであなたの意見を述べよ」など
➢「論文」的テーマを課す出題者は、あなたのスペック(知識や能力)を知りたがっている
●小論文を書く前に
小論文を書く前にやるべき大切な下準備があります。
≪小論文を書く前にやるべきこと≫
①読み手は誰なのか?
②この設問から何を求めているのか?
①読み手は誰なのか?
小論文を書く上で、誰がその文章を読み、評価するのかを把握することは重要です。読み手を把握することで自分の思いや主張が伝わる文章を書くことができます。いかに自分の主張や熱意を読み手に伝えるかが高評価につながります。
②設問から、読み手は何を求めているのか?
読み手はあなたの答案を重視します。読み手の視点は大きく、「人柄・感性」と「能力・理性」に分けられます。たとえば、専門知識が必要な仕事や黙々と作業する能力が求められる分野では、「能力・理性」が、ひとと対面する販売や接客業では「人柄・感性」が求められやすいことはイメージしやすいでしょう。このように、読み手の分野や立場によって「評価されるポイント(=何を求めているのか)」は異なります。
さまざまな職種や企業、学校にそれぞれ特徴があるように、読み手が求めている「人柄・感性」と「能力・理性」のバランスを見極める必要があります。つまり、読み手に「私は、志望する会社・学校にとって有益な人材であり、採用される・合格するべき人物である。」ことを伝える必要があります。
これらを「小論文」を書く前に把握することが重要です。書く前に把握した情報を文章作成のベースとして、ブレない軸を立てましょう。
Point❹ 小論文を書く前の事前準備
- 読み手を分析をした上で自分をアピールする
- 自己分析を行う、日頃から情報を収集するなど物事に対する自分なりの考えを持つ
●小論文で大切なこと
あなたが、小論文を書く「目的」はなんですか?
過去問を解いて志望先の「傾向」をつかみたい
課題で「評価」を得たい
など、さまざまな理由があると思います。
試験に合格することが目的の場合、試験問題の「小論文」では試験官に高評価をいただいて合格を目指します。その際に、読み手が書き手に何を求めているのかを理解していることは大前提です。読み手が、「学力を基準に評価しているのか」「一緒に働く仲間として人柄の部分を重要視しているのか」では回答方法はまったく異なるでしょう。
このように、試験を受ける目的によってアプローチの仕方が変わってきます。
(例4)推薦入試の志望理由書
(例5)昇進・昇格試験の答案
昇進昇格試験が上司からのひと声で受けることになった場合、「私はそもそも試験は受けたくなかったのですが、上司に受けようと話をされて・・・」とあなたは話しますか?たとえ「客観的な事実」を述べても「正直でよろしい」と高い評価を得ることはできないでしょう。また、読み手も「昇進させてほしい」という前提で書かれた答案だと思って読むはずです。
(例4)(例5)のように、「思いのまま、感じたままに書くこと」は時に相手を不快にさせてしまうことがあります。押さえるべき「枠組み」を理解していないと小論文試験でいい結果は得られません。稀に、型破りな答案で合格する人も中にはいるかもしれません。しかし、それはたまたま採点する人と相性が良かっただけに過ぎず、試験突破の切り口にはなり得ないでしょう。
「目的」を達成するためには「手段」が必要です。小論文作成は、どのような出題意図があるのか、相手は自分の何を知りたいのか、計画的に行う必要があるでしょう。正直に書かなくてもいいことと正直に書くべきこと、「枠組み」を考えて書くことが大切です。最も重要なことは、「設問の要求に沿った答案であること」です。「枠組み」の範囲内にとどめて、余計なことは書かないようにしましょう。
Point❺ 小論文で大切なこと
- 答案の先にいる「読み手(試験官、採用担当者、上司等)」が求めていることを見極める
- 「小論文」で大切なことは、「設問の要求通りに答えること」
●設問の要求に過不足なく答えよう
大学入試や昇進昇格試験などで課される小論文には、かならず「設問」があります。最近は、「設問」に書くべき内容と構成が指定されているパターンが多くなっています。
(例6)【設問1】昇進昇格試験の一例
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(例6)【設問1】昇進昇格試験の一例
「当社の置かれた外部状況を概観①し、当社の強みと弱みを抽出②した上で、今後に向けた方策を提言③しなさい。提言は、全社レベルとあなたが所属する部署レベルに分け④、それを踏まえてあなた自身の今後の取り組みまで踏み込む⑤こと」
(例6)のような設問では、かなり細かく「何を」「どう」書いたらよいかが指定されています。答案の流れは設問内に書かれている通りです。設問の要求に過不足なく応えましょう。
- 当社の置かれた外部状況を概観
- 当社の強みと弱みを抽出
- 今後に向けた方策を提言
- 全社レベルでの方策/自部署レベルでの方策
- 自分自身の今後の取り組み
次に、もう一つの例題を見てみましょう。上記、(例6)の設問にならい、指定される答案の流れを読み解き、設問の要求に過不足なく応えましょう。
(例7)【設問2】大学入試の一例
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(例7)【設問2】大学入試の一例
「ネット選挙の功罪を挙げ①、ネット選挙が解禁されたときに起こる影響を予想②し、それに対する対応策を述べよ③」
- ネット選挙の「功」/「罪」を挙げる
- ネット選挙が解禁された時に起こると予想される影響
- その影響に対する対応策を述べる
2つの例題から、答案の流れはつかめましたか?設問の要求以外の自分が書きたいことを書いてしまった場合、減点されてしまうので注意が必要です。
Point❻ 設問の要求に沿った答案が大前提
- 設問が要求する内容を要求する順番で書き、「過不足なく」答えること
- 設問の要求に沿った回答のまま、何も足さず何も引かないこと
●小論文でわかるあなたのコミュニケーション力
なぜ「小論文」が入試や昇進昇格試験で出題されると思いますか?その答えは、出題者の意図にあります。出題者側はあなたの小論文から「コミュニケーション能力」を測っているのです。
Point❼ 小論文でわかる4つのあなたのコミュニケーション能力
- 出題者とのコミュニケーション能力
- 資料とのコミュニケーション能力
- 社会とのコミュニケーション能力
- 自分とのコミュニケーション能力
- 出題者とのコミュニケーション能力 まず、きちんと設問の要求に応えられているかで「出題者」とのコミュニケーション能力が評価されます。どんなに素晴らしい文章を書いても、設問の要求に沿った内容や構成になっていなければ答案に点数がつきません。
- 資料とのコミュニケーション能力 資料付き小論文の場合、文章や図表など資料が与えられます。資料をきちんと読み取れているかで「資料」とのコミュニケーション能力を評価されます。さらに、答案からはその人が普段どれくらい社会に対し、アンテナを立てて情報を収集しているかも分かります。
- 社会とのコミュニケーション能力 知識のみならず、普段からどのくらい自分の頭で考えているかも答案から分かります。答案の文章から「社会」とのコミュニケーション能力を評価しています。
- 自分とのコミュニケーション能力 たとえ内容や構成が整った文章力や知識があっても、それが「自分の言葉」でなければ、読み手に伝わりません。自分の思考と感情にどれほど支えられた文章なのか、自分の中で紡ぎ出した言葉なのかは読めばすぐにわかります。出題者が一番知りたいことは、「自分」とのコミュニケーション能力といえるでしょう。
小論文試験は言い換えると「コミュニケーション能力試験」です。コミュニケーション能力はあらゆる場面で必要です。出題者の意図として、「小論文」を毎年出題し重要な試験科目に位置づける理由はここにあるといえるでしょう。
●まとめ
今回は、「小論文」と「作文」の違いから書き方のポイントまで例文を挙げて解説しました。あらゆる「小論文」対策への対策の一助になれれば幸いです。
●添削堂.comについて
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