袖振り合うも他生の縁

 私が世界に紹介したい「美しい日本語」は「袖振り合うも他生の縁」です。

「道を行く時、見知らぬ人と袖が触れ合う程度のことも前世からの因縁によるとの意。どんな小さな事、ちょっとした人との交渉も偶然に起こるのではなく、すべて深い宿縁によって起こるのだということ。袖すり合うも他生の縁。」

引用元:精選版 日本国語大辞典

 つまり、「どんな出会いも単なる偶然ではなく、この世に生まれる以前からの深い縁によって生じるものなので大切にしなければならない」ことを説いた仏教的な教えからきています。日常生活などで使用する場合は、初対面の挨拶だけでなく、偶然の再会や、思いがけない縁を感じた場面にも使うことができます。

 私は現在、文章添削士養成講座のティーチングアシスタント(TA)を担当しています。役割としては主に講師と受講生との「橋渡し役」であり、講座の準備や受講生からの問い合わせへの対応などを行い、講座が円滑に進むことのお手伝いをしています。

 縁があって今回で2回目のTAとなります。

 初めてTAを担当した時は、自分自身が養成講座を卒業して間もない頃でした。3名の受講生もまた私よりも遥かに年下の若い方々でした。私自身がこれまでの人生であまり年下の方々とのやり取りを経験してこなかったこともあって「果たして私に彼らと上手くコミュニケーションが取っていけるのか」という大きな不安を抱えていました。

 しかも、受講生の方々は既に独自の経験が豊富だったこともあり、講座への理解力が優れていました。そんな中で私自身はあまり彼らにとって有意義な情報を伝えることができず、講座が終わった後で「この伝え方で良かったのか」「もっと上手く伝える方法はなかったか」と自問自答する日々でした。

 講座終了後、受講生だった彼らは無事に文章添削士となり、今では私以上に協会内でのポジションを獲得して活躍しています。その姿を間近で見ることができ、また自分自身も彼らから良い刺激をもらっているのはTA冥利に尽きます。

 2回目となる今回は、講座自体も自分が受講した時、そして初めてTAを担当した時から進化しています。私自身もホンの少しだけ経験値が増えました。

 今回担当している4名の受講生には私と同年代の方や年上の方もいます。各々の背景も全く異なっていて経験豊富な方々です。私にとっては前回とは異なる「課題」を持って取り組んでいます。

 彼らが今後文章添削士になって、各々のポジションで活躍することを楽しみにしながら「袖振り合うも他生の縁」の意味を改めて実感しています。

 (茅根康義)

   

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