前回、前編として「ハロウィンの起源」と「日本の行事との共通点」についてご紹介しました。
今回はその後編として「仮装」「Trick or Treat」「カボチャ」について触れていきます。
まず、ハロウィンと言えば仮装イベントのイメージが定番になっていますが、「なぜ仮装するのか?」まではそれほど知られていないようです。
ハロウィンの起源とされるケルト地方では、「10月31日は現世と来世を分ける境界が弱まり、祖先の霊が戻ってくる日」と考えられていたことを前回お伝えしました。
実は、その時に悪霊の類も一緒にやってくると恐れられていたのです。
そのため、その悪魔に人間だと気付かれて悪さをされないように、火を焚いたり仮面を着けたりして身を守ったことが仮装の起源だといわれています。
次に、ハロウィンには「Trick or Treat(悪霊にいたずらされたくなかったら、お菓子をちょうだい)」と言いながら、子どもたちが近所の家を訪ね歩きます。
これは、「ソウリング」と言う中世ヨーロッパの儀式が由来ではないかといわれています。
ソウリングでは、子どもたちが亡くなった人の霊を弔うための「ソウルケーキ」をもらって歩きます。もしケーキをもらえないと亡くなった人は悪霊になり、悪さをするようになると考えられていました。この風習がハロウィンの「Trick or Treat」に繋がったのではないかといわれています。
また、ハロウィンでは仮装と並び、もう一つ有名なアイテムとしてオレンジ色のカボチャがあります。
あのカボチャには「ジャック・オー・ランタン」という名前と、ある伝承があります。
昔、嘘つきで粗暴なジャックという男がいました。
ある時ジャックは、ハロウィンの夜に地獄から出て来た悪魔と出会い命を狙われます。
そこで上手く悪魔を騙し、逆に「今後、絶対にジャックの魂を取らない」と約束させます。
時が経ちジャックはこの世を去りますが、生前の行いが災いして天国にはいくことができません。しかし、悪魔に「魂を取らない」と約束させたことにより、地獄に行くこともできません。
行き場のなくなったジャックは、恐ろしく暗い闇が広がる空間をさまようことになりましたが、最後の願いとして悪魔から足元を照らすための火を分けてもらいました。
ジャックは、その火が風で消えてしまわないように、道端に転がっていた「カブ」をくりぬいてランタンとして利用しました。
そして、ジャックは今でもそのランタンを持ってさまよい続けているという話が「ジャック・オー・ランタン」の由来になります。(諸説あり)
ここで注目なのは、そのランタンはカボチャではなく、カブだったということです。
ハロウィンの行事がアメリカに渡った時、カブがあまり栽培されていなかったことから、比較的近い代用品としてカボチャが選ばれました。
ハロウィンではオレンジ色のカボチャが一般的ですが、緑色のカボチャと違い固い皮(殻)がなく、カブと同様に細工しやすいことから使われるようになりました。
最後に、主にカトリック教徒の間で行われてきた11月1日・2日の「諸聖人の日」や「死者の日」ですが、アメリカではカトリック教徒があまり多くなかったためこの行事は広まらず、ハロウィンだけが残っていきました。そこにアメリカ独自のお祭り要素が加えられ、今日のハロウィンの姿になったといわれています。
日本のハロウィンはヨーロッパではなく、主にアメリカから伝わってきたものになります。
そのため、本来の意味が知られることなく年々パフォーマンス性の高いイベントになってきていますが、時にはこのように起源に注目してみると新たな楽しさも感じることができるかもしれません。
(植木乃梨子)