いよいよ2023年も残すところ、半月となりました。
まだ旧暦であった頃は、もうこの時期からお正月準備に入っていました。
特に12月13日は『正月事始め』と言われる日で、この日からお正月を迎えるための準備が始まりました。
今でも全国の神社などで行われている『煤払い』は、地域によって『正月迎え』『ことはじめ』『まつならし』等と呼ばれ、掃除とともに新年の歳神様をお迎えする、お正月準備の行事とされています。
現代のように、門松や松飾りを専門業者やお店から購入するような習慣がないころは、12月13日になると家長または新しい年の年男になる者が山に行き、門松を飾るための松を採って来ました。これを『松迎え』と呼びます。この日は、婚礼以外であれば全ての行事を行うのは吉日とされ、お正月の準備をするにはふさわしい日と考えられていました。
現代では仕事納めが28日前後になるところが多く、そこからお正月の準備を始めることが通例になっていますが、できればそれまでの間に少しずつ家の中の掃除を進めておいて、28日には門松や鏡餅などを飾れるようになるのが望ましいです。
玄関に飾る門松や、松飾りは新しい年の歳神様に「どうぞ我が家にお越しください」「我が家はお迎えの準備が整っています」とお知らせするための目印とされています。
鏡餅は歴代の天皇が継承する三種の神器の内の八咫鏡(やたのかがみ)をかたどっているともいわれ、神様が年末からお正月の間にお留まりになる依代(よりしろ)として供えられます。また、2段に重ねられた丸いお餅は太陽と月を表しているなどの諸説もあります。
もし、松飾りも鏡餅も28日に飾ることが間に合わなかった場合は、30日に飾り、29日と31日は避けます。
その理由は、「九」のつく日が「苦」に繋がると考えられた日であること。そして、31日は、神様にお知らせする「目印」としての飾りの役目が年内でたった1日しか果たせないことです。これは「一夜飾り」と呼び、昔は葬儀の祭壇が一夜しか飾らなかったため、それを連想させるものとして縁起が悪いと考えられていました。
新しい年の歳神様をお迎えする準備ですから、語呂合わせも縁起担ぎも総動員して準備が進められるのです。
昔から年末年始行事と言うのは1年の中で最も重要とされてきた行事です。
現代では、旧暦の頃に行われていた日にち通りに行事を行うのは難しくなっていますが、せめて「松飾りや鏡餅は何のために飾るのか」などについては、知っていてほしいと思っています。お子さんから「なぜお供え餅は丸いの? なぜ2つ重なっているの?」などと聞かれた時に、お父さんやお母さんが「それはね…」と教えてあげられたらとても素敵ですね。そして、そのお子さんが成長して、また次世代や海外の方へ伝えていくことで、日本の伝統文化が広く永く知られていってほしいと思います。
(植木 乃梨子)