皆さんは「漢字」を書くことは好きですか?これまでに、漢字のたった一画の誤りで減点されて悔しい思いを学生時代に経験した方も少なくないのではないでしょうか。
社会人の皆さんにおかれましては、自筆で文字を書く機会が少なくなった現代で「いざ漢字を書こうとしたら思い出せない……。」という方も多いでしょう。文章を書くうえで「漢字」は、マスターしておきたいものです。
今回のテーマは「漢字」です。漢字が苦手な方も得意な方も、漢字の新たな一面を知っていただき、文章力につながるようにお伝えいたします。
●日本の漢字の歴史
・漢字の原型となる「甲骨文字」について
私たちが普段使っている漢字は、これまでに様々な変容を遂げています。漢字は中国から伝わってきました。最も古い漢字の祖先を「甲骨文字」といいます。「甲骨文字」は、まるで絵のように見えることから、見たものを真似て書くことは遥か昔から行われていたことが伺えます。
【画像引用元:漢書、漢字 (uchinavisa.com)】
そもそも、耳馴染みのない「甲骨」とは一体何でしょうか。甲骨は、「亀の甲羅」や「獣の骨」のことで硬くて腐食しにくい特徴があります。先代の人々は甲骨を占いに使い、占った内容を刻んだとされています。先代の人々が使用していた「甲骨文字」は、3500年後の近代に発見されました。
私たちが行ってきた文字や文章を書き残すという営みは、長い年月を経てもなお続いていることがわかります。見たものを写して書くことは「視写(ししゃ)」といい、現代でも文章力を高めるためには重要なスキルの一つです。
●漢字とひらがなの関わり
・日本独自の文字「平仮名(ひらがな)」の誕生と歴史
漢字の歴史にみるように、漢字は中国で誕生した後に日本へ伝来しました。では、現代の私たちに馴染みのある「平仮名(=以下、ひらがな)」はどのように誕生したのでしょうか。漢字が日本に伝わる以前に日本には固有の文字はありませんでした。
日本の歴史を遡ると、縄文時代以前から日本列島に住んでいた人々である大和民族の思想に辿り着きます。大和民族は八百万の神々を信仰し、言葉には言霊(霊力)が宿ると考えていました。諸説あるものの、神話や伝説など大切なことはすべて口伝で伝えていたのです。
日本において漢字を本格的に使用するのは4世紀末から5世紀初め頃とされています。およそ1600年前からの歴史があり、現代の漢字へと続いているのです。
・「万葉仮名」と「ひらがな」に共通する音との関係
日本で「ひらがな」が誕生する前に「万葉仮名(まんようがな)」があります。「万葉仮名」は、漢字をもとに日本語の「音」を表記するために作られました。「万葉仮名」は、万葉集で使われた仮名の一種です。
【画像引用元:「ひらがな・カタカナ」の成り立ちは?起源を知ればボールペン字がキレイになる! | ボールペン字講座で「汚文字」から「美文字」へ (ballpen-course.com)
このように、「万葉仮名」は漢字の意味に関係なく「音」や「訓」を使って表現した文字です。「万葉仮名」をさらに崩して書きやすくした文字が「ひらがな」です。
- 発音を表した文字を「表音文字」といいます。
- 一つ一つが意味を持つ文字を「表意文字」といいます。
(例)ひらがな、カタカナ、アルファベット
(例)漢字
●漢字のかたちと漢字の覚え方
・6種類の漢字のかたち
漢字のかたちは6種類あり、「六書」といいます。
- 象形文字(しょうけいもじ)
- 指示文字(しじもじ)
- 会意文字(かいいもじ)
- 形声文字(けいせいもじ)
- 転注(てんちゅう)
- 仮借(かしゃく)
ここでは①~④について1つずつ説明していきます。
- 象形文字…物の形をかたどって表した漢字。 (例)山・人・門・日・月・川・羊・馬・目・口・刀 など
- 指事文字…図や記号などを使って抽象度が高い概念を表した漢字。 (例)一・二・三・上・下 など
- 会意文字…象形文字や指事文字を組み合わせて新しい意味を持たせた漢字。 (例)林・休・北・炎・明・見・祭・進 など
- 形声文字…象形文字や指事文字を組み合わせて新しい意味と音を持たせた漢字。部首からは意味、つくりからは音を取って表す。漢字の8割以上を占める。 (例)「校(コウ)」→キヘン+交(コウ)「花(カ)」→くさかんむり+化(カ)
私たちが使う漢字はそれぞれ意味を持って成り立っていることがわかります。
・漢字を覚える3つのコツ
最近、パソコンやスマートフォンに漢字変換を頼ってばかりではいませんか?手書きの際に漢字が思い出せずに困る場面が多くなったのではないでしょうか。そこで皆さんに有効な漢字を覚えるコツを3つ紹介いたします。
- 漢字を観察する
- 部首を覚える
- 書いて覚える
<漢字を覚えるコツ①漢字を観察する>
書きたい漢字をよく観察し、脳に漢字を焼き付け、字形のバランスや特徴を掴みましょう。たとえば、「細」という漢字の場合、「糸」部分は幅を狭く、「田」の部分の幅をすこし広めに書きます。そして、「田」は横線がくるので、「糸」より少し背を低く書くようにします。
「細」の漢字のお手本
「細」の漢字の書き方
【画像提供:渡辺のり子】
へんの幅を狭めに、つくりの幅をやや広めに書くと良いです。また、つくりに縦線がくるときは、へんより背を高く、横線がくるときはへんよりすこし背を低く書くようにすると美しい字になります。いきなり整った字を書くことはハードルが高いと感じてしまう場合は、小学校低学年のときに使っていたマス目が4分割された漢字練習帳や方眼ノートを使って練習してみましょう。
<漢字を覚えるコツ②部首を覚える>
4種類の漢字のかたちでお伝えした「四書」の一種、「形成文字」の仲間である「湖」のように「サンズイ」は水に関係する文字を表しています。ほかにも「林」など部首が「きへん」の場合は木に関係する文字を表しています。つまり、漢字の組み合わせが分かると、部首を見て「漢字が何に関連した言葉なのか」を推測することができます。部首で仲間分けができるので、新しい漢字を覚えることが今より楽になるはずです。
<漢字を覚えるコツ③書いて覚える>
漢字を良く見て部首も頭に入ったところで実践です。何度も書いて漢字を頭に叩き込みましょう。書いて覚える際に大事なことは、書写の基本である「書き順」と「トメ・ハネ・ハライ(基本点画)」をしっかり意識して丁寧に書くことです。そもそも、「書き順」や「トメ・ハネ・ハライ」というのは、漢字を書く際の自然な筆の運び方です。つまり、「書き順」や「トメ・ハネ・ハライ」に沿うことで無理なく流れるように筆記できるということです。脳が自然とその流れを覚え、漢字の覚えも早くなるはずです。基本的なことですが、覚えるためには有効です。
●漢字の音読みと訓読み
・漢字の読み方と熟語
漢字の覚え方を習得したら、次は「読み方」に注目してみましょう。漢字には「音読み」と「訓読み」の2通りの読み方が存在しています。「音読み」は現在の漢字の故郷、中国の音が土台となっています。対して「訓読み」は日本の言葉に漢字を当てはめたものです。中国語や、学校の授業で習う漢文の白文(=レ点や上下点等がないもの)には送り仮名はなく、送り仮名がある場合には、訓読みであると考えることができます。
さて、二字熟語の読み方には、いくつかの組み合わせがあります。上の文字、下の文字の漢字の音読みと訓読みの組み合わせ次第で、読み方が4種類に分けられます。
- 音読みと音読み(例)色彩(シキサイ)、花粉(カフン)
- 訓読みと訓読み(例)音色(ねいろ)、花見(はなみ)
- 音読みと訓読み(例)団子(ダンご)、本音(ホンね)
- 訓読みと音読み(例)見本(みホン)、朝晩(あさバン)
このように、熟語は音読みと訓読みの組み合わせで読まれます。①と②のように音読みどうしと訓読みどうしの読み方と③と④のように音読みと訓読みが組み合わさった熟語の読み方には注意しましょう。③は重箱読み(じゅうばこよみ)と呼ばれ、④は湯桶読み(ゆとうよみ)と呼ばれます。
・送り仮名の区切り方
送り仮名は、漢字を文章の中で使う際に重要です。漢字を覚えることに加え、送り仮名もしっかり習得し、脱字に別れを告げましょう。覚え方としては、前述のように書いたり、声に出したりして覚えるやり方がおすすめです。声に出して覚える際には、例えば、「確かめる」を「たし/かめる」というように漢字自体の読みと送り仮名に区切って読んでみましょう。
●まとめ「漢字とひらがなの歴史を学び、文章力につなげよう」
今回は文章を書く時に避けては通れない「文字(漢字・ひらがな)」についてお届けしました。古代の中国で生まれた絵のような文字が伝わり、現代に至るまで変容を遂げてきました。日本において「文字」は「音」と深く関わっており、「万葉仮名」が変化して、いま私たちが使っている「ひらがな」につながっています。
このように日本独自の文字である「ひらがな」は、長い時代の中で生きる様々な人の思いを経て誕生しました。歴史に触れることで、皆さんも普段から触れている「文字」の新たな側面を感じることができたのではないでしょうか。現代に生きる私たちも「言葉」を大切に、さらなる進化を遂げていきましょう。
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参考サイト:
日本語に訳す時の特殊性 – 希少言語や多言語、文書等の出張翻訳・通訳の事なら|通訳翻訳舎 (2yak.jp)
漢字の歴史・成り立ち・種類 (chugokugo-script.net)
難易度1 音と訓① | こんな間違い、していませんか?漢字の問題にチャレンジ! | 日本漢字能力検定 (kanken.or.jp)
重箱読み・湯桶読みとは?代表例と一緒に解説|中学国語|定期テスト対策サイト (benesse.jp)