「自分の作品が安い値段で売買されているのを見てショックを受けた…」
といった話を最近SNSで目にすることが増えてきた。
ヤフオフを見ていると、様々な作家さんの作品が販売されている。また、通信販売でも手軽に購入できるようになり、わざわざギャラリーに行かなくても絵画を購入できるようになった。見る側にとっては作品に触れるチャンスが増えた分、作家さんにとっては自分の「分身」のような作品が安価で売買されているのを見てしまうと憤りを覚えてしまうこともある。そのような話を見聞きすると、絵画を購入する立場としては複雑な心境になる。
作品を見ていると「自分のものにしたい」という気持ちが起こるよ。
前編でも紹介したアートディレクターさんから言われたことである。
絵画を購入する動機としては、
- 好きな作家さんを応援したい
- インテリアの一部として
- 自分の美意識を育てる
などが挙げられる。また投資目的という人もいるかもしれない。
基本的に絵画を印刷したプリントものでない限りは「1点もの」であり「限定品」である。自分では気に入ったとしても他の人が購入すればその作品と対面することは画像以外では皆無である。そうなってしまう前に「自分のものにしたい」と思って購入する。
最初は白一色の雰囲気を変えたいなぁと思っていた反面「絵画=ぜいたく品」という意識が強く、なかなか購入するまでに躊躇していた。しかし、いざ購入してリビングに飾ってみると、購入した時の気持ちを思い出したり、絵画を眺めながらボーッとできたりと気分転換のスペースにもなっている。
とは言っても、購入できる予算は限られているのであくまでも自分で購入できる範囲内で購入するようにしている。
さらに絵画を購入することによって「その作品がこの値段で良いのか」という問いかけにもなっている。ある作品を見ていて衝動的に「いいなぁ」と思っても、提示されている金額が自分の目から見て妥当なのかを考えることにもなり、その作家さんの画力から「高いなぁ」と思ったり、「これは安いのではないか?」と思ったりすることがある。
私自身、作品を一目見ただけで「あっ、これは欲しい!」と思えてすぐに購入したが、部屋に飾ってみると「あれ?」と違和感を感じたことがある。逆に購入するか作品の前で30分近く迷ったものの、最終的に購入するのを諦めた。翌年には既に自分が買える予算よりも値上がりしていて「あの時買っておけば良かった…」というケースもあった。
こうして絵心のない私が、ギャラリーに通って絵画を見たり購入したりすることで、知らないうちに作家さんやアートディレクターさんの創造的なプロセスを仕事や日常生活の中で適用することを学んできた。そして、今後も日常生活の問題や課題を独自の視点から捉え、従来の常識にとらわれずに解決策を見つけ出すことを意識し続けたい。
(茅根 康義)