【時代を越えて語り継がれる言葉】

 私達のまわりには、日常的に使うことはほとんど無いにもかかわらず、古くから伝え続けられている美しい言葉がたくさんあります。その中のひとつに季節を表す言葉があります。

 日本には昔から、睦月・如月・弥生・卯月・皐月・水無月・文月・葉月・長月・神無月・霜月・師走と呼ばれている和風月名があります。知っている人でないと「何月のことかわからない」ということがあるかもしれません。
 1年の各月を1月・2月・3月・・・のように数字で区別するのは、世界共通の表示方法であり、こちらの方が誰もが判別しやすい合理性があります。

 しかし、文字を見ただけで何となく「いつ頃なのか」「どのような季節なのか」がわかりそうな月名にはとても趣を感じます。
 ”日の出とともに目覚め、日没とともに休む。”
 季節に応じて田や畑の種植えや収穫を繰り返してきた先人たちにとって、季節というのは単なる数字で順番を表すようなものではなかったと思います。

 暦には1年を12分割した月名の他に、『二十四節気』というものがあります。
 これは1年を4つの季節に分け、さらにそれぞれを6つに分けて言い表すもので、よく知られているものには、春分・夏至・秋分・冬至などがあります。
 季節の様子は、同じ月でも始まりと終わりでは変わってしまうことはよくあるため、農作業計画を立てるときは、月単位よりも二十四節気を基準にするほうが非常に現実的でした。

 他にも季節の移り変わりを表す『雑節』というものがあります。これらをうまく組み合わせて、生活をしていた先人たちの知恵と感性にはいつも感心させられます。
 もうすぐ、二十四節気の中の『冬至』を迎えますので、最後に少しだけ触れておきます。

 冬至は「1年の中で日の出から日没までの時間が最も短い日」として知られています。
 実は、冬至には『一陽来復』という別名があります。
 この意味は「悪いことが続いたあとに、良いことが巡ってくる」「冬が終わって春が来ること」などの意味があります。

 実際にはこれから本格的な寒さがやってきて、厳しい冬を迎える季節となりますが、陰陽説の見方では「これまでの苦労が報われ、吉方に向かう」と捉えられます。年内の内にしっかり厄を祓い清めて、もうすぐ来る新しい年に向けて準備をするには良いタイミングなのではないかと思います。

 2022年の冬至は12月22日です。
 冬至にはかぼちゃや小豆を食べるとよいことや、ゆず湯に入る風習などがありますが、これについてはネットでも多くの情報が紹介されています。「なぜ、かぼちゃなのか」「なぜ、柚子なのか」それぞれ意味がありますので、興味のある方は是非お調べになってみてください。

【追記】
 毎月、歳時記として月の異名や祝日の由来などを紹介しています。それぞれの意味を知る前と後では感じ方やとらえ方も変わってくることがあります。
 私たちの住む日本の文化を、世界の人々や後世の人たちにも知っていただけるよう、これからも発信してまいります。

(植木乃梨子)

   

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