コミュニケーション能力を頼りに旅する台湾

 海外旅行デビューが遅かった私は、多くの国を知らない。なのに、あっという間に台湾のとりこになってしまった。

 街角で、路上で、夜市で、見たことのない食べ物にたくさん出会う。台湾に住まない限り、到底食べ尽くせない種類である。茶色い食べ物が多いのだが、抜群のおいしさだ。これが台湾リピートの理由である。

 さらに惹かれるのは、台湾の人々の親日度と温かさ、おおらかさである。店で注文するとき、「日本人?」と尋ねられ、なぜか喜んでもらえる。自慢にもならないが、私の英語は片言で、中国語は全くできない。大好きな台湾を堪能したいから、知恵を絞って工夫をする。例えば食堂で壁に書いてあるメニューは、スマホで写真に撮って、指差し注文をする。本屋で本を探したいときは、Amazonの写真を見せたり、漢字を紙に書いたりする。

 台北では、日本語や英語がなんとか通じるが、台南に行くとどちらも通じないことが多い。バスに乗る時、運転手さんに地図を見せ、自分が降りたい場所を指さして、目力と「むむむ」と訳の分からない音を発し「ここで教えて」とお願いしたこともある。無事教えてもらいたどり着けた。言語が苦手でも、コミュニケーション能力だけは、人に負けない。

 困っているとき、困っていると言わなくても、助けてくれるのも台湾の人だ。空港で失くしものをしてしょんぼり歩いていたら、後ろから来た若い女性に声をかけられたときはびっくりした。どうしてわかったのかしら。パスポートをホテルに忘れ、死に物狂いで止まっているエスカレーターを上ろうとしていたら、あちらにエレベーターがあるとおばあさんに身振りで教えてもらったこともある。

 人も気候も温かい台湾は、第二の故郷のような気がしてしまう。そしてまた、何度でも訪問し、コミュニケーション能力を駆使するのである。

(夏目 雅子)

   

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