あの虹を渡って~ワールドカップ体験記【第二部】

★20年後のまえがき

  サッカー観戦がある意味「ライフワーク」になっている私にとってワールドカップは「お祭り」です。
しかも開催国で試合をライブ観戦できる機会はまさに「千載一遇のチャンス」とも言えます。実際にスタジアム
で観戦た試合が劇的な幕切れであったこと、そして熱狂的なサポーターと同じ空間にいるというのは実際に体験
できたことで私にとっては「生涯忘れられない試合」でした。

 ドイツvsアイルランド

 ドイツは次の2006年開催国だっただけに、今回はあくまでも「通過点」という位置付けでした。
 それでもGWオリバーカーン選手を中心に決勝まで残り、ブラジルには敗戦したものの準優勝。

 一方のアイルランドと言えば、ワールドカップ直前でミック・マッカーシー監督と中心選手だったロイ・キーン選手との確執があって、ロイ・キーン選手が登録を外されたという状況で、下馬評ではドイツが優勢と言われていました。しかし、試合終了直前の劇的な幕切れがあったこととアイルランドからやってきたサポーターの「熱狂」とが重なったことでより印象的な試合になっています。

 そんなことを思いつつ、2002年の文章を読んでいただければと思います。

 ★2002年のまえがき

 日本代表勝ちましたね~。
 ワールドカップ日本代表vsロシア代表。

 稲本選手のゴールで1ー0で勝ち、初勝利を挙げました。

 日本代表初勝利に日本中が涌いている中で、茨城県出身
の鈴木隆行選手は、ゴールこそ挙げることができませんで
したが、前線からの守備に貢献していました。

 また、惜しいシュートもあり、後半中山選手と交代
になりましたが、なかなかの活躍でした。

 次のチュニジア戦に決勝トーナメント進出の期待が
かかります。
 活躍してくれるといいな…と思います。

 今回は第2部に入っていきます。
 どんな旅行記になりますやら…。

 またしばらくおつきあいしてくださるとうれしいです。

 では、スタートしま~す。

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 第2部 ドイツvsアイルランド戦
     6月5日 水曜日

 きっかけは昨年の12月のことでした。

 夜、携帯が鳴り友達から「ワールドカップのチケ
ットが手に入った…」という話が来たのでした。

 普段何ごとも他人任せなのに…と思いながらも、
「これでワールドカップに行けるんだな…」ってい
ううれしい気持ちになったのでした。

 あれから半年…。

 ようやっと待ちに待ったワールドカップ観戦の日が
やってきたのでした。

 もちろん会社を休んで…といきたかったのですが、
そんな時に限って仕事が多いんですよ。(苦笑)

 でも何とか午前中で切り上げ、カシマスタジアム
に向かうことになりました。

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「遅い~」

 土浦駅の改札口で、私はなかなかやってこない友達
にイライラを募らせた。

 私の友達は東京在住なので土浦駅で待ち合わせする
ことにしていた。

 確かに前日残業だったかもしれないけど、約束した
時間をとっくに過ぎているのにまだ現われない。

 私がしびれを切らした頃、ようやっと改札口に現わ
れた。
「あ、悪ぃ、悪ぃ」

 まったく本人は悪びれていない。

 いつも待ち合わせするとこんな感じなので、時間に
余裕を持たせている。
 今回もギリギリの時間に待ち合わせしなくて良かっ
たな…と思いつつ、やっと出発。

 今日もピーカンの天気。
 梅雨入りはまだ先のようで本当に今日が晴れて良か
ったな…って思いつつ、車のハンドルを握る。

 一路鹿嶋へ…といきたいところだが、当日は交通
規制で市内は入れない。

 そこで今回は「大竹海岸」の駐車場に向かった。

 土浦から「大竹海岸」までは道は分かりやすいの
で、まずは霞ヶ浦大橋を目指すことにした。

 途中、ゴルフ場を見ながらひたすら車を走らせる。

 土浦駅を出発してから1時間位経っただろうか。
 ようやっと霞ヶ浦大橋が見えて来た。

「うわぁ、凄くきれいだ。海かと思ったよ」

 友達がそう呟いた。

 晴れているせいか橋の両サイドに霞ヶ浦が広がって
いる…っていった感じで心地よい景色だった。

 それを眺めながら霞ヶ浦大橋を渡った。

 私も初めてこの橋を渡ったのだが、本当に景色が
きれいだ…と思った。

 そして、橋を渡り終えたその時である。
 警察の機動隊の車を発見。

「ここまで厳戒体制になっているんだな…」

 いよいよワールドカップっていう実感が涌いてきた。

 ただ、車越しにこちらを睨んでいるのが分かった。

「おっと…」

 横で友達がシートベルトを慌てて付けていたので
きっとこれが原因なのだろう…。

 何とか無事に切り抜け、ひたすら案内に従って
大竹海岸まで車を急ぐ。

 途中道に迷ったものの、まだ時間が早いせいか
混雑も無く順調に大竹海岸の駐車場に近付いて来た。

 いよいよ、長い1日が始まるんだな…って思うと
本当に今から楽しみです。

 今日は予選リーグEグループ最終戦でした。

 5日にカシマスタジアムで直接対決をしたドイツと
アイルランドは、決勝トーナメントをかけ試合が行な
われました。

 ドイツは静岡でカメルーンと、そしてアイルランド
は横浜国際でサウジアラビアとの対戦でした。

 アイルランドの方は予選敗退が決まっているサウジ
アラビアということもあって3ー0で勝ちました。

 そして、ドイツはカードが16枚も出るというかな
り荒れた試合でしたが、2ー0で勝ちました。
 何でもワールドカップでの最多記録とか。

 その結果、ドイツが1位。アイルランドが2位で
予選突破が決まりました。

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 前置きが長くなってしまいましたが、そろそろ
続きを始めたいと思います。

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「いやぁ、それにしても波高くないか」

 大竹海岸の海を見て、友達がポツリと言った。

「え、別に普通だよ」

 と私。

「え~、普段からこんななの」
 友達はまだ納得できない様子。

 茨城の海は「鹿島灘」と呼ばれているだけあって、
外海なので波が常にある。

 でも、他からやって来た人は茨城の海の「波」に
驚く人が多い。

 波があるので逆にサーフィンなどのマリンスポーツ
をやる人にとっては実は「穴場」だったりもする。

「外海だから波があるんだよ」と説明し、ようやっと
納得してくれたようだ。

「大竹海岸」は子供の頃に何度か「潮干狩り」でやっ
てきたことはあるが、今回はワールドカップのため…
とは言え、10年以上ぶりのことだった。

 でも、海岸を歩いてみるとほとんど景色に変わりが
無く、子供の頃に遊んだことをふと思い出した。

 そして、シャトルバスの時間までまだ30分以上も
あるので砂浜を歩いてみることにした。

 快晴で、しかも風が吹いていたので本当に気持ち
が良かった。
 でも、日射しが強いので砂浜で寝ていたらすぐに
真っ赤になってしまいそうだった。

 周囲を見渡すと、やはり同じように何組かのグル
ープが海岸を散歩していた。

 ただ今日は平日のせいか、さすがに泳いでいる人
まではいないようだ…。

 ふと上を見上げると、ピンクのパラシュートが見えた。
しかも、背中にエンジンのようなものを積んでいる。

「どこから飛んでくるのかな…」
「その辺の小高い丘からかな」

 二人でふとそんな会話をしながら気持ち良さそうに
飛んでいる人に手を振ってみた。
 他にも気付いた人がいたようで、デジカメに写真を
撮っていた。

「そう言えばカメラ持って無かったな…」

 ちょっとだけ後悔する私。

 平日の昼間だということを忘れてしまいそうな一時
を過ごし、いよいよシャトルバス乗り場に向かった。

「こんにちは」

 早速、ボランティアの人に声をかけられる。

 この後も様々なボランティアの人達に出会う訳だが、
本当に大変な仕事だな、って思う。
「ワールドカップを成功させたい」と思うその気持ちが
ヒシヒシと伝わってくる。
 そんな人達に支えられながら、私達は今日こうして
観戦できるんだ…ということを実感していた。

 そんなボランティアの人達に私達も「こんにちは」と
返した。

 いよいよ、シャトルバスに乗り、一路本日の舞台で
あるカシマスタジアムに向かってバスが走り出した。

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 実は私はバスの中で少し昼寝をしようと思っていた
のだが、とにかく横で友達が懸命にサッカー談義を
しかけてくる。

 それはそれで楽しいんだけど、ちょっとだけ頭の中を
オフの状態にしておきたい私にとっては、

「おい、ちょっと黙っていられないか…」

 という気持ちになってきた。

 ま、ハイテンションの気持ちに水を差す訳にもいか
ないので、聞いているのか聞いていないのか分からな
いような返事をしながらバスの時間を過ごしたのだった。

 バスに乗る事約30分。

 目の前にようやっとカシマスタジアムが見えて来た。

 バスを降り、はやる気持ちを迎えながら、スタジアム
に向けて私達は歩き出したのだった…。

 さて、本日のお話に入る前に…。

「死のグループ」と呼ばれるF組の最終戦が行なわれ
ました。
 何と言っても驚きなのは「優勝候補」と呼ばれたアル
ゼンチンが予選リーグで敗退してしまったことです。

 カシマスタジアムでの第1戦では「強さ」を見せて
いただけに本当に残念です。

 これでナイジェリアに続き、茨城開催での2チーム
が姿を消してしまいました。

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 さて、前置きはここまでにして、今日のお話へと
すすめていきます。

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「うわぁ、でかいな~」

 歩いて右方向にカシマスタジアムが見える。
 友達は初めて来たのでふとそんなことを呟いた。

 さぁ、いよいよやってきたんだなぁ。という
ワクワクした気持ちがさらに強く成る。

「それにしても、こんなに警察必要なのか?」

 歩いて行くうちに、だいたい2~30メートル間隔
ぐらいで警察の人が立っていることに気付いた。
 そして思わず友達が呟いた一言だった。

 確かに「フーリガン対策」とは言え、本当に厳戒
体制の警備だという気もしてきた。

 そんなことを思いながらスタジアム周辺までやっ
て来た。

「おい、あそこがどうやらプレスルームらしいぞ」
「もしかして誰かテレビか何かで出てくる人がいない
かな」

 まっ先にマスコミ関係の「プレスルーム」のプレ
ハブを発見。
 何台かのパソコンなどがあって実際に仕事をして
いる人達もいた。

 窓から覗いてみたものの、やはり有名な人はそこ
にはいないようだった。

 スタジアム周辺は「わいわい交流広場」になって
いて、茨城県のお土産物、果物などの展示・販売や、
出場国の食事コーナー、フェイスペインティング
コーナーなど様々なイベントが行なわれている。

 まずは茨城県の紹介コーナーから見てみる。

「すいか」や「メロン」を中心に様々な農作物が並ん
でいるテントを発見。
「おいしそうだな~」と食い意地の張っている私は
見ていて思っていた。

 しかも、目の前には一切れづつ切ってあるので
「試食」かと思ったのだが「一切れ100円」の文字
を見て泣く泣く断念。

 ちょっと後悔したものの、お金出して食べたいとは
思えなかった。

 また次のテントを歩いていると、茨城のお土産を
売っているコーナーがあった。
 茨城ファンクラブでも以前に紹介した「納豆せんべ
い」などが売られていた。

 まずはお土産を購入しようと物色していたところに、
「鹿嶋七不思議(うみの音)」というマドレーヌを
見つけた。

 どうやら、ワールドカップのために開発された新しい
お菓子ということで新聞で紹介されていたものらしい。

 そして、その隣にはサッカーボールのデザインが
あるどら焼きもあったので両方を買うことにした。

 とりあえず、職場と家族へのお土産は完了っと。

 そして、オフィシャルショップもあって、ワールド
カップ関連グッズが数多く売られていて、職場の先輩
から「何でも良いから買ってこい」との指令に従って
バッチを購入。

 さて、これで安心して観戦できる…。

 フェイスペインティングコーナーは行列ができる
ほどの大にぎわい。

 どうりでスタジアム周辺にいる人達が異様に顔に
国旗を書いている人が多いのだ、ということを実感した。

 今度は鹿島サッカースタジアム駅のほうに歩いて
みることにした。

 歩いている途中でスタジアムの電光掲示板を見る
ことができる場所があって、眺めているうちに「早く
中に入って観戦したいな…」という気持ちになってきた。

 そして、駅前にある別の交流広場にやってきた。

 早くもアイルランドサポーターが応援歌を歌ったり、
踊ったりしていた。

 しかも、数も多い。

 一方ドイツサポーターは数では負けているものの、
腹の底から出てくるような声を出してくる。

 売店で買った「使い捨てカメラ」片手に写真を
撮影しつつ、両国の「違い」なんかを感じていた。

 6月14日は「歴史的瞬間」でした。
 何と言っても日本代表がチュニジア代表を2ー0
で下し、予選リーグを突破したことです。

 そして、今回も鈴木隆行選手はスタメンからの
出場でした。
 得点こそ挙げることができませんでしたが、相手
の執拗なマークなどもあり削られて反則を得るシー
ンが何度かあり、フリーキックのチャンスを演出
していました。
 また、いつものように守備にも貢献…といぶし
銀的な活躍をしていました。

 次回は18日トルコ戦となります。
 次の活躍をまた期待したいと思います。

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 さて、今回の連載も9回目を迎えました。
 試合までなかなか辿り着かなくてイライラされて
いる方々も多いのではないかと思いますが、しばし
のおつき合いをお願い致します。

 それでは第9話のスタートです。

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「いってぇ~、足つるかと思ったよ」

 大声でわめきながら友達が私のところに戻って来た。
 話を聞くと、近くでアイルランドサポーターが
ボールリフティングをやっていて、その輪の中に
入って一緒にやってきたらしい。

 やはり子供の頃からプレーをしていて、社会人に
なった今でも草サッカーをやっているその「血」が
騒ぐのだろう。

「早く言ってくれれば写真撮ったのにな…」

 でも、日本人と外国人が同じボールで遊ぶ…とい
う光景はやはり「ワールドカップ」ならではだな、
とふと思っていた。

 お昼をほとんど食べていない私達は、まだ時間
がたっぷりとあったので、いろいろと売られている
お店があったのだが、その中で「キムチ鍋」と「チ
ジミ」を売っているお店を発見し、買って食べて
みることにした。

 キムチ鍋は韓国からやって来た人が作っている
だけあって、後からじわりとくる「辛さ」が何と
も言えないくらい美味しかった。

 他にもいろんな店が出ていてバラエティーに富ん
でいた。
 椅子に座って食べていたところ、目の前にスーツ
を着た人が何やら調査をしているのを発見。

 お役所か何かの人かな…。
 どうやら、食べ物の安全面などをチェックして
いるようだ。

 アイルランドの人達は本当に陽気。
 何人かの人が歌って踊って試合前から騒いでいる。

 私も中に入って一緒に写真を撮ってもらったけど、
本当に気さくな人達ばかりだった。

 中には忍者姿や浴衣姿の人達も一緒になって写真
に収まっているシーンもあった。

 この人達は鹿島アントラーズサポーター「インファ
イト」のボランティアメンバー、とのことだが、
本当に茨城開催のボランティアの方々の「ワールド
カップを盛り上げたい…」という熱き思いを感じる。

 その横で友達が、

「アイルランド人って結構日本滞在の人が多いんだ
なぁ。日本語話せる人もいたぞ。しかも大阪弁だし」

 あまり想像つかないけど、聞いていて思わず笑え
てしまった。

 そんな楽しい時間を過ごせたのだが、今回の入場
ゲートがちょうど反対側にあたるため、来た道をまた
戻るような形でゲート方向に向かうことにした。

 メインスタンド側のゲートにもだいぶ人が集まって
来て、荷物チェックに行列ができている。

 その姿を見やりながら、一路私達が入るゲートまで
歩いた。

 途中、電光掲示板が見えるところがあって、コマー
シャルの画面が写し出されている。

 「早く入りたいな~」というはやる気持ちになって
きた。

 また、国道沿いに戻って来るとだいぶ人が増えていた。
 そして、「チケット譲って下さい」と書いたボード
を掲げている外国人とすれ違った。

 やはり「プラチナチケット」なのだと実感する。

 歩くこと10分位でようやっとゲートの前までやって
来た。

 そこの近くでもやはり「交流広場」があって、さ
すがにアイルランド側のゴール裏だけあって、緑の
集団ばかりだった。

 テレビのインタビューに答えている人などもいて、
眺めているだけでも楽しいくらいだった。
 もっと眺めていたいのだが、やはり、スタジアム
の中に入らなきゃ…という思いが強く、ゲート前の
行列に向かう。

 そして荷物チェック用のビニール袋をもらい、い
よいよゲートの列の最後尾に並ぶことにした。

 いよいよ3番ゲートの前までやってきた。

 初日であるアルゼンチンvsナイジェリア戦の荷物
チェックが大混雑した…という話を聞いていたので
少し早めに並んだのだが、2回目とあってだいぶス
ムーズに終わった。

 私の荷物をチェックしたのは年配の方だったのだ
が、
「ペットボトルとか入ってないよね」
「入ってないですよ」

 っていった感じで普段Jリーグでチェックするよう
な雰囲気で1分もかからず終了。

 そして、金属チェックを受ける。
 私は、先月の日本代表vsスウェーデン代表戦の時も
ブザーが鳴ってベルトで引っ掛かったので「また、
鳴るのかな…」という不安もあったが、今回は鳴る
ことなく無事に終了。

 ちょっと拍子抜けという気分だったものの、まずは
順調に終わった。

 で、時間がかなりあったのでグッズ売り場で公式
プログラムを買い、ベンチに座った。

 スタジアムの通路では相変わらずアイルランドサポ
ーターが騒いでいるのが聞こえてくる。

「早く観客席まで行きたいな…」と思いつつ、しばし
ボーッとフェンスの外側を眺めていた。

 目の前には、レストハウスや芝生の公園があって、
フットサルを楽しんでいる連中がいた。

 横でうらやましそうに眺めている友達の姿があった。

 昼間は「暑い」くらいだったのに、夕方にもなると
むしろ「寒い」くらいである。
 私はトレーナーを持ってきたのだが、車の中に置い
て来てしまった。

「持ってくれば良かったな…」

 ちょっとだけ後悔しつつ、ポロシャツ1枚の私
だったのであるが、試合の熱気で何とか凌ごう…。
と前向きに考えていた。

 しばらく友達としゃべっていたところに突如バス
がフェンス越しに見えた。

「ボーイズ・イン・グリーン」

 という文字が見える。

 どうやら、アイルランド選手を乗せたバスらしい。
緑色に塗られた専用バスが通り過ぎて行く…。
 慌てて私もカメラのシャッターを押した。

 しばらくボーッとしていたのだが、スタジアムの中
から歓声が聞こえてきたのでいてもたってもいられず、
ついにスタジアムへの階段前の最後のゲートをくぐり、
一歩一歩階段を歩いていった。

 階段から既にアイルランドサポーターの歓声が聞こ
えてくる。
 今日負ければ予選リーグ突破が難しくなるだけに、
もっと悲愴感があるのかな、と思っていたけど、いた
って陽気。

 一体、このパワーっていうのはどこからくるのか…。
 試合がますます楽しみになってきた。

 ピッチ上では2面に分けられ、地元サッカー少年団
によるミニゲームが行なわれていた。

 巧いプレーや得点が入るとその度に「お~」という
歓声が上がる。

 それにしても最近の小学生たちのレベルには驚かさ
れる。
 ボール捌きなんか、私達の頃とはまるでレベルが違う。

 しかも、ショートパスがきっちりと決まっている。

 Jリーグが始まって約10年になるが、それまで
「不毛の地」だった鹿嶋に鹿島アントラーズができて、
そしてその活躍に刺激を受けた子供達が着々とレベル
アップが図られているんだな、と実感する。

 横で、
「大人がハーフコートでサッカーやってもキツいのに
こいつら本当に巧いな~」

 どうやら友達も感心しているようだ。

 観客からの大歓声の中、子供達のミニサッカーも終
わり、選手のウォーミングアップまではまだ時間があ
った。

 私は売店に行ってグッズを買おうと思っていた。
 が、行ってみると既に今日の分のグッズはとっくに
売り切れていて、次回のイタリアvsクロアチア戦の
グッズしか売られてなかった。

 ちょっと拍子抜け、っていうかがっかりしてしまった。
 ただ、それだけアイルランドサポーターが多いって
ことなのかな。

 その中で、コカ・コーラを買ったのだが、カシマスタ
ジアム限定カップを発見。
 思わず買ってしまった。

 しばらく外をボーッと眺めていると、まだ入場ゲート
の方は行列になっていて次々と人が入ってくる。

 ふとその中でまたもやバスを発見。
 あれがドイツの選手を乗せたバスのようだ。

 アイルランドとは違って日本のどこかの観光バス
らしい。

 席に戻って改めて全体を見渡す。
 私達のいる席は、メインスタンド右側のゴール裏
2階席。その中腹のあたり。

 あいにく電光掲示板が見えない位置ではあるもの
の、サッカー専用スタジアムだけあって傾斜が急な
分、見晴しは最高。

 しかも、ピッチの芝も照明に照らされ、鮮やかな
グリーンだった。

 まさに最高の状態で試合を迎えるのだ!!

 選手が出てくるのを今や遅しと待つだけでますます
楽しみになっていく…。

 え~っと、当初の予定では今日から「納豆のお話」
を再開するはずだったのですが、ワールドカップ旅行
記がまだまだ終わらない状況となってしまっておりま
す。

 管理人の勝手なのですが、「納豆のお話」は6月
一杯お休みとさせていただきます。

 申し訳ありません。

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 さて、ワールドカップも決勝トーナメントを
迎えました。

 カシマスタジアムで試合を行なったドイツと
アイルランドは韓国に渡り、試合が行なわれま
した。

 ドイツは主力3人が累積警告&出場停止で欠場
する…という状態の中、15日にパラグアイに
1ー0できっちりと勝ち、ベスト8に進出しました。

 一方のアイルランドは16日にスペインと対戦
しました。
 優勝候補スペインを相手に「アイルランド魂」を
今回も発揮し、カシマスタジアムでの試合同様、
後半終了間際に同点に追い付き、延長戦に突入
しました。

 最終的にはPK戦で惜しくも負けたものの、スペ
インを追い詰め、大いに盛り上げました。

 そして17日は鹿嶋に最もなじみの深いブラジル
が予選リーグの韓国から日本にやってきました。
 日本が対戦して引き分けたベルギーが相手でした。

 ブラジルの個人技が「キラリ」と光り、2ー0
で勝ちました。

 管理人個人としては、決勝戦はブラジルvsスペイン
がいいな…と思っていますが、いよいよワールドカッ
プも佳境に入ってきました。

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 さて、今回は前置きが長くなってしまいました。
 第11話、始めていきます。

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 しばらくの間電光掲示板の音だけだったスタジアム
から突然歓声が上がった。

 アイルランドの選手がウォーミングアップを開始
するためにピッチに現われたからである。

 そして、ドイツの選手も遅れてウォーミングアップ
を開始する。

 ウォーミングアップを見ているだけで本当に試合
がもうすぐなんだな…ということを感じる。

 と感慨にふけっていたその時、

「いや~、びっくりしたよ」

 って私の友達が座席に戻って来て奇声をあげている。

「コーラ買おうと思ったらさ、後ろにいたアイルランド
人が「ビール飲む?」っていうからテキトーに答えたら
「ビール2」なんて言ってきてさ、おごられちゃうとこ
ろだったよ…」

「何それ、うらやましいじゃん」
 と私。

 ちなみに友達はビール飲めないので、結局断ったら
しいのだが。
 でも、アイルランドサポーターって見知らぬ人に
ビールおごっちゃうくらい気さくな人なんだろうな…
とアットホームな雰囲気を想像してしまった。

 そして、いよいよメンバーが発表された。

 さすがにドイツのメンバー発表の時には会場から
の「ブーイング」の嵐。

 ドイツサポーター少ないのかな。
 異様に緑だけが目立つスタンド。

 逆にアイルランドのメンバー発表の時には割れん
ばかりの大歓声。

 完全にアイルランドのホーム状態になっていた。

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 スタジアムの外で打ち上げられた花火がスタジアム
からはっきりと見え、あまりにも綺麗な光景だった。

 そして、アイルランドサポーターからのウェーブ。
 メインスタンドからドイツ側ゴール裏、更にはバッ
クスタンドを経て、アイルランド側ゴール裏に戻って
きた。

 これが3周続いた。

 最初、ドイツサポーターのあたりで流れが切れる
のかと思ったのだが、ウェーブが続いていた。

 これが日本でのワールドカップの良さ、だよね。
 まさに「お祭り」。

 選手とスタンドが一体になって試合を盛り上げる。
 その一体感がたまらない。

 ついに、テンションが最高潮になる瞬間がやってきた。
 選手が入場してきたのである。
 会場のボルテージが一気に上がり、割れんばかりの
大歓声が響きわたっていた。

 両国の国歌演奏になると、やはりアイルランドの
時には国歌の大合唱になる。

 選手たちが記念撮影を終え、ピッチに散らばった。
 ホイッスルが鳴る、その時を迎えたのだ…。
 さらに心臓がバクバクしている自分がいたのは
言う間でもなかった。

 いよいよ「茨城ファンクラブ」の日記が早い
もので200回目となりました。

 その記念すべき日記だったのですが、残念な
ニュースがありました。

 日本代表がトルコ代表とベスト8をかけた試合が
宮城スタジアムで行なわれ、1ー0で負けてしまい、
「ベスト16」で終わってしまいました。

 今回の鈴木隆行選手は「ベンチスタート」となっ
てしまいました。

 途中交代で出場したものの、あまり見せ場が無く
終わってしまいました。

 しかし、彼が挙げたベルギー戦での得点がきっか
けで歴史に残る「ワールドカップ予選リーグ突破」
の偉業が達成されたのです。

 その活躍に対して心から拍手を送りたいと思います。

 そして、曽ヶ端選手は出番が無いまま終わって
しまいましたが、4年後は日本代表正GKとして
活躍できるといいな…なんて思っています。

 選手の皆様、本当にお疲れさまでした。
「夢」の続きは、また4年後に見せて下さい。

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 さて、今回で12回目を迎えました。
 なかなか時間が進まないのでご不満の方々も
多いかとは思いますが、いよいよ第2戦の試合
の模様に入っていきます。

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 スタンドからの数多くのフラッシュの中、試合
が始まった。

 私の周りはアイルランドサポーターだらけなので、
試合開始直後から大声援。

「ボーイズ イン グリーン」を始め、せいぜい3種
類くらいの応援歌なのだが、自然発生的にスタンドの
あちこちから歌が聞こえてくる。

 日本代表のように「誰かがリードして…」っていう
感じの応援ではなく、本当に「波」のように次から次
へとつながっていく。

 誰かが「ボーイズ イン グリーン」を歌い出すと、
それに連れて周囲の人達が続く…。

 しかも、それがゴール裏全体に響き渡る。
 何だか波が押し寄せてくるような感じがする。

 で、その繰り返し。
 何度も何度も同じ歌が続く。

 そんなムードの中、前半の最初はドイツが主導権
を握る。

 後方からのピンポイントのロングパスが入って
きて次々とチャンスが生まれ、アイルランドゴー
ルを脅かしていた。

 その度に周囲から悲鳴とため息がでてくる。

 必死にゴールを守っていたアイルランドだったが、
前半19分にドイツのクローゼ選手にヘッドで決め
られ、1ー0でドイツがリードする。

 その後雨が一時的に降り出してきたものの、次第
に雨があがってきた。

 傘を持ってなかった私は屋根の下なので良かった
が、「せっかくの観戦なので雨止まないかな…」
なんて思っていたのでホッとした。

 点数を入れられたアイルランドではあったが、
次第にペースを掴み、チャンスがでてきた。

 といったところで前半が終わり、ハーフタイムに
入った。

 一目散にトイレに行こうとしたところ、途中で
メンバー表が配られた。

 しかし、係員の人が
「押さないでください」

 といくら叫んでも収拾がつかず、取り合いと
なってしまった。
 で、結局貰うことができず、がっかりだった。

 トイレの方も大混雑で、私は何とか後半のキック
オフに間に合ったが、私の友達なんぞは後半が始ま
って5分くらいしたからだった。

 何とか間に合った私は、後半が始まるまで少し
時間があったので座席の周りを改めて見ていると、
左隣は親子2人連れだった。

 そう言えば子供の頃、父親に連れられてプロ野球
観に行ったな…。
 きっとこの子供にとっては、「父親と行ったワー
ルドカップ」っていうことで思い出すんだろうな…。

 右隣は家族連れ。
 上と下はグループ…などなど、本当に様々な人達
が来ている。
 やはり、Jリーグの雰囲気とはまるで違う。

 そして、後半が始まった。
 後半はアイルランドペース。

 ドイツが、やや引きぎみだったこともあるが、前掛
かりに「これでもか、これでもか」といった勢いで攻
めてくる。

 ある時はドイツの選手に止められ、またある時は
チャンスがドイツのGKカーン選手のスーパーセーブ
に阻まれ、ことごとく潰されていく…。

 一方のドイツは、前掛かりのアイルランドの攻撃を
防ぎながら、一瞬の隙を突いてピンポイントでチャン
スを作り出し、「ヒヤッ」とさせられる場面もあった。

 アイルランドが押しぎみに進む後半は、前半以上に
アイルランドサポーターからの声援の声が大きくなっ
てきた。

 私もいつの間にか「アイルランド」の選手の動き
を追い、のめりこんでいった。
 すっかりにわか「アイルランドサポーター」と化して
いた。

 とにかく「巧い」選手はいないけど、全員で攻撃し、
全員で守る流れができあがっているチームだと思った。

 私は、試合が進むにつれて彼らの「ひたむきさ」に
共感を覚えるようになってきた。

 しかし、時計は45分を差していた。

「いよいよここまでか…」

 私もほとんど諦めかけていた。
 とうとうロスタイムに入ってしまった。

 しかし、ここでまさに「奇跡」が起こった。

 DFからのロングボールを途中出場のクイン選手
がヘッドに競り勝ち、そのこぼれ球をロビーキーン
選手が競り勝った。

 その瞬間、ゴール裏の観客席が総立ちとなった。

 カーン選手をかわし、ゴールにシュートを放つ。

「入った~!!」

 総立ちの観客席から大歓声が巻き起こる。
 試合終了直前、しかもラストチャンスでものに
した得点だった。

 アイルランドベンチもマッカーシー監督を始め、
選手全員がピッチにかけよってきて喜びを爆発させ
ていた。

 同点、という劇的な瞬間だった。

 これで1ー1となり、ドイツは決勝トーナメント
進出決定が次のカメルーン戦へと持ち越された。

 そしてアイルランドは、この引き分けで決勝トーナ
メント進出に何とか「残った」のである。

 試合が終了して、選手がゴール裏にあいさつにやっ
てきた時にも、全員で肩を組み、勝ったかのような
歓喜に包まれていた。

 ドイツ側に空席が目立ってからもアイルランド側は
帰る人がほとんど無く、余韻に浸りながら応援歌を
歌い続けていた。

 その時、感動のあまり、鳥肌が立つ思いで観ていた
私にとって聞き慣れた「あの曲」が流れてきたのである。

「Walk on~、Walk on…」

 スタンドからある歌声が聞こえてきた。

「あ、you’ll never walk aloneだ…」
 すぐに「ピーン」ときた。

 イングランドのサッカー場ではおなじみの曲。
 日本ではFC東京が試合開始前などで歌っている
曲である。

 When you walk through a storm
 嵐に出会った時は
 Hold your head up high
 しっかり前を向いて行こう
 And don’t be afraid of the dark.
 暗闇を恐れてはいけない
 At the end of the storm
 嵐の向こうには
 There’s a golden sky
 青空が待っている
 And the sweet, silver song of a lark.
 雲雀が優しく歌ってる
 Walk on through the wind
 風の中を行こう
 Walk on through the rain
 雨の中を行こう
 Though your dreams be tossed and blown.
 たとえ、夢破れようとも
 Walk on, walk on
 歩こう、歩き続けよう
 with hope in your hearts
 希望を胸に
 And you’ll never walk alone
 俺達は一人じゃない
 you’ll never walk alone.
 俺達は一人じゃない

 FC東京サポーターが歌っているよりはアップ
テンポであったが、まさに「本場」のサポーター
が歌っているのを聞くだけでさらに鳥肌が立って
きたのである。

「本当に今日はこの場に来る事ができて最高だな~」

 そう思わずにはいられなかった。

 余韻にしばらく浸った後、通路に移動した。

 そこでも、アイルランドサポーターが階段の上から
下まで占拠して、「オ~レ~オレオレオレ~」の大合唱。

 そこに「にわかアイルランドサポーター」になって
いる日本人が一緒になって騒いでいる光景。

 私もその中の一人。

 まさに「我を忘れて」その歓喜の中で騒ぎ、そして
歌っていた。

 ようやっと出口付近までやってきた。
 そこにはボランティアの人達が大勢見送りにやって
きていた。

「ありがとう」
「さようなら」

 といった日本語でのあいさつが聞こえてきた。
 今までバカ騒ぎをしていたアイルランドの人達が
きちんと感謝の気持ちをもって話し掛けているでは
ないか。

 また、それに笑顔で答えるボランティアの人達。

 微笑ましい光景だった。

 本当にサッカーを愛している人達だからこそできる
ことだな…という思いがした。

 ゲートから出ると、やはり隣の「交流広場」のあたり
までずっとアイルランドサポーターのバカ騒ぎが続いて
いた。

 テレビカメラに向かって騒いでいる人。
「二ッポンチャチャチャ」と騒いでいる人。
 などなど…。

 まるで優勝でもしたかのような騒ぎが続いていた。

 ゲートをでるまでは大人しかった友達がその輪の中
に入ってはしゃいでいるのではないか。

 まだ使い捨てカメラが残っていたので写真を撮っていた。
 最近の「使い捨てカメラ」って凄い。

 望遠まで付いているのがあったので買ったのだが、
あと数枚残っていたので撮った。

 しかし、後で現像したら写って無かった。
 フラッシュがないのでやはり写らなかったようだ…。
 ちょっとがっかり…。

 そんなバカ騒ぎを遠巻きに眺めていたところ、

「ヘイ、ユー」

 アイルランドの人に声をかけられた。

「これ、読んでみな」

 英語の言葉は良く分からなかったが、恐らく
ニュアンスはそんな感じだろう。

「Come on you boys in green」

 とアイルランド国旗に書いてあるその文字を読んだ。

「一緒に歌おうぜ」

 そんな風に聞こえた。
 どうやらこれが「ボーイズ イン グリーン」という
サポーターズソングの歌詞のようだ。

「あ~、これが試合の時に歌われていた曲なんだ…」

 やっと私にも意味が理解できた。
 で、一緒になって歌った。

 歌いながら何となく「思い」を共感できたように
感じることができた。

 言葉が通じなくても「サッカー」という同じ「言
語」で理解できるものなのだと思った。

 結局1時間近く盛り上がった後、そろそろシャトル
バスの時間が気になってきたのでバス乗り場まで歩い
て移動することにした。

 移動の途中で多くのボランティアの人達が立って
警備を行なっていた。

 そんな人達に感謝の気持ちを込め、

「お疲れ様です」

 思わずそう声をかけていた。

 笑顔で挨拶を返してくれる人、また、びっくり
している人等様々な反応があったが、本当に私達
がこうやって安全に観戦できたのは陰でボランテ
ィアの人達の「支え」があったからだとつくづく
思った。

 そして、友達と二人で今日の試合の余韻に浸り
ながらバス乗り場までひたすら向かった。

(第2部 完)

【茅根康義】

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